「きっかけ」を大事にするということ ~壁打ちを通して~

北陸で中小企業の経営支援をしております迅技術経営です。

今回は「きっかけ」を大事にする、をテーマに私の経験をもとに自分なりにまとめてみました。

かなり長い記事ですがご興味を持たれましたら、最後までお付き合いいただければ大変嬉しく思います。

    • 壁打ちとは
    • 迅技術経営の壁打ち
    • 壁打ちの在り方
    • きっかけ、想い、行動
    • 相手との出会いをきっかけにする
    • 得られた学び

      壁打ちとは

      弊社では今年度から新卒既卒の方の採用活動において従来の質問会やエントリーシート、士業・役員による面接に加え、「壁打ち」を実施しております。
      壁打ちは1時間×計3回実施しており、私はその第1回目を担当させていただいております。ありがたいことに既に数回ほど壁打ちをさせていただきました。

      弊社で実施している壁打ちは、いわゆる「面談」とは少し様相が異なっていると私自身認識しております。面談と聞くと、他社様においてはOB・OGへの訪問や、先輩・メンター社員との対話などが想定され、学生や就活中の方にとってもそちらがなじみ深いかと思います。

      コンペルによれば、壁打ちとは、『ビジネスにおいては、話を誰かに聞いてもらって考えを整理することを意味する言葉。アドバイスや意見への答えを求めるのではなく、考えたことの整理を主な目的として行われる。』と定義されています。

      この定義の通り、野球やテニスにおける原義の壁打ち以外の意味で言えば、通常はビジネスプランなどについて対話を通して、より解像度を上げ具体化していく作業がビジネスにおける壁打ちだと言えます。

      迅技術経営の壁打ち

      では弊社、迅技術経営の採用活動における壁打ちとはいったいどういったものなのでしょうか。

      端的に言うと、

      『「これからの人生の中で成し遂げたいこと」を考えるきっかけにする場』

      が弊社の壁打ちであり、同時に最大の目標でもあります。

      重要なのは成し遂げたいことを見つけてもらうことではなく、考えるきっかけにしてもらうことにあります。

      就職活動中は多少なりともこれまでの人生とこれからの人生を考えることになるいい機会かと思います。しかしながら就活における最終目標は内定を得ることにあるため、どうしても考える際の視点がES(エントリーシート)や面接におけるアピールポイントや実績の振り返り・掘り起こしに寄って行ってしまう傾向にあります。私も同様に、テクニックや実績面を過剰に重視して就活をしていたと思います。就活のための資格取得などはその最たる例でした。

      しかしながら就活や内定を得る事とは、どういった仕事をしたいのか、どういった人に、どういう風に携わりたいのかといった土台をある程度明確にした上で、その希望がかなうような会社や仕事に携わるための一つの手段にすぎません。

      その土台があればこそ、内定を得る以外にも、起業や独立のほうが最適だったり、家業を継いだりフリーターをしてみるほうが合っていたり、第一志望ではない業界や会社、職種のほうがやりたいことが出来る環境だったりに気付くことができる可能性が高くなるはずです。

      私はこういった視点が大きく欠けていたと改めて感じます。

      こういった現状を鑑み、上記とは違った視点で人生や仕事を捉え直すようなきっかけがあるといいのではないか、ということで壁打ちが設定されているものと認識しています。

      人生を考えるとはなんとも壮大かつ難解なテーマではありますが、これを就職活動中に考える事が、今後の人生を大きく左右するきっかけとなり得ると思います。そのきっかけにしてもらうための場として、壁打ちを実施している点が通常の壁打ちや従来の面談との相違点だと言えます。

      壁打ちの在り方

      では、上記の目標を達成するためには、壁打ちはどうあるべきでしょうか。

      私が壁打ちを実施する上で大切にしている点として、

      ①打ち手側(学生側)に主体があること

      ②考えを整理できるようなヒントを投げかけること

      が挙げられます。

      ①については文字通り、私たちは壁になるため、打ち手側に気持ちよく打ってもらえる(話してもらえる)ようにする役割があると考えています。壁が一方的に話したり、主導権を握っては上記の目標に打ち手側が近づくことはありません。

      ②についても同様で壁とは言っても、見当も付かないような方向へボール(話題、考え、ヒント)を返していては壁打ちそのものが有効なものになりません。とはいえ相手が取りやすいところに返していてはオウム返しのようで何の進展も無いため、ある程度捕りづらい(考える必要がある)場所にいい塩梅でボールを返す必要があります。

      ある壁担当はこのような思考を巡らせる上での苦痛を筋肉痛と表現していました。言い得て妙で、体の筋肉痛は普段使っていない筋肉を使うことによる炎症だそうですが、思考の筋肉痛も同様で、普段使っていない方向へ思考を巡らせていることがうまく表現されているなと感じました。

      少し話が逸れましたが、これだけを見ると、会社や社員側に何のメリットがあるんだろうと感じられることと思います。ましてや弊社の壁打ちはエントリーの前段階に設定されているため、壁打ちの結果エントリーしていただけず、採用時間の無駄になる可能性も大いに考えられます。

      実際に壁打ちの前後で、参加していただいた学生の方からは「なんでわざわざこういった場を設けているのか、メリットは何なのか」といった疑問や、「時間を取らせてしまって申し訳ない」といった言葉をいただくことがあります。

      これまで述べてきたように、弊社で実施している壁打ちは、打ち手側にとって「人生でやりたいことを考えるきっかけ」になってくれればそれで十二分であるため、企業として良い人材と出会えることや採用が社員の業績に関わるといったことは、壁打ちにおいては二の次、論点外だと言えます。

      とは言うものの、学生の方から上記のようなお言葉をいただくように、私たち壁側にとって全くメリットが無いのかというと、実はそうではないなということを感じてきましたので、どういったメリットがあったのかまとめてみました。

      きっかけ、想い、行動

      前置きがなが~くなってしまいましたが、ここからが当記事の本題です。

      学生の方々はこれまでの経験や勉強してきた知識を活用しながら就職活動に挑んでいます。エントリーシートや面接で出てくる経験や知識は聞く人が聞けば薄っぺらい、うわべのものに聞こえるかもしれませんが、私個人はそうは思いません。

      むしろ彼らの中に、濃淡の差はあれど、信念や興味関心といった「根っこ」の部分があるからこそ、行動に至ったのだと感じています。

      例えば、

      ・①住んでいる地域の過疎化を目の当たりにした→②地域を活性化させたい!→③地域創造学・観光学・経済学

      ・①自分自身がマイノリティであることを経験した→②虐げられている人を助けたい!→③社会学・福祉学・公共政策学・法学

      ・良い人に出会って成長させてもらった→自分も人の成長に携わりたい!→教育学・心理学・哲学・人類学

      といったルートが考えられます。実際にこういう想いから該当学部に進学を決めた方も多いのではないかと思いますし、私自身もそうでした。

      ①は「きっかけ」、②は「想い(根っこ)」、③は「行動」です。他者から見れば取るに足らないきっかけかもしれませんし、想いも行動も浅はかかもしれません。

      無論、このきっかけは記憶として覚えていても、その想いまでメタ的に認知しているかどうかは人によって異なるとは思います。しかしながら「きっかけ」を「きっかけ」で終わらせず、根っこを張るぐらいの想いにまで育て、そして行動に移すことができたからこそ今の彼らがいます。もちろん大学へ進学することだけが行動ではありませんし、全員が全員意志を持って志望学部へ進学するわけでもありません。それでも、繰り返しになりますが、行動をしている多くの人には、何等かのきっかけやそこから出てきた想い・根っこが絶対にあると信じています。

      相手との出会いをきっかけにする

      また前置きが長くなってしまいました。

      確認になりますが、「壁打ち」とは想いや根っこを掘り起こして、人生をかけて成し遂げたいこと=行動が自分にとってどういったものなのかを今一度考えてもらう場のことでした。

      そして、壁に求められている役割は、①打ち手側に主体を持たせつつ、②考えるためのヒントを投げかけること、にありました。

      では、壁の役割を果たすために何をするべきなのでしょうか。

      それは、

      「相手が持つ想いや根っこを自分自身にも張り巡らせるよう努力すること」

      だと思います。

      相手の想いを探るのに、自分自身が相手を何もわかっていない状態では文字通りの「壁」に成り果ててしまい、壁打ちの目標は達成できません。

      とはいうものの、想いや根っこを張るためには①のきっかけが必要ですが、相手が経験したきっかけが、同じように自分自身もすぐに経験できるでしょうか。

      実は同じような経験をしていた、ということも考えられますが、ほとんどの場合、答えはNOでしょう。同じような環境にいて似た経験はしているかもしれませんが、そこからどういった想いや行動に派生しているのかまでを考えると、中々同定できないためです。

      しかし、「相手との出会い」をきっかけとした場合はどうでしょうか。

      つまり、質問会を経て壁打ちに進んで頂ける相手と出会えたこと、これがまさに自分にとってのきっかけとなります。このきっかけをきっかけで終わらせず、そこからその相手が考えていることや感じていることをつかみ取りたい!いうような想いにまで派生させ、それを踏まえてしっかりと努力することが、行動となります。

      この努力は「準備」とも言い換えることができると思います。

      相手がどういったきっかけで、そこから何を学び、行動に移してきたのか。これを知る準備(努力)として、私の場合は、相手が経験してきたきっかけや、持っている想いに関連した書籍を読むことを実践しています。ほとんどの場合、全く知らない分野についての書籍を読むことになりますが、とてもいいきっかけになっていると感じていますし、壁打ちが終わってからも未だに関連した書籍を読むほどになっています。

      得られた学び

      ここからの教訓として、私は次のことを学びました。

      それは、

      「行動」は誰かにとっての「きっかけ」となるということ

      です。

      私自身も壁打ちはもちろんのこと、様々な場面で多くのきっかけをいただいてきました。振り返ってみると、頂いてきたきっかけは誰かが行動した結果としてもたらされてきたものだと痛感しております。

      その人が行動をしていなければ、そのきっかけもまた無かったものとなっていたはずです。

      壁打ちも例に漏れず、そもそも相手が質問会に参加していただけなければ、そもそも就活サービスに登録していただけなければ、そもそも今の大学に入学していなければ、そもそも行動に至るきっかけがなければ、、、

      この教訓から壁打ちにおける私の役割は次の2つのものがあるのではないかと感じるようになりました。

      ①壁役としての役割→壁打ちの目標である人生を考えるというきっかけを投げかける立場

      ②私という人間としての役割→いただいたきっかけをきっかけで終わらせず新しいきっかけをもたらす立場

      この2つは相補関係にあり、①を果たそうとするためには②をしっかりと果たす必要がありますし、②を果たすためには①という役割が必要になります。どちらかの役割が欠けてもいけません。

      以上をまとめると、

      ①きっかけや経験を通して想いや根っこがうまれる。

      ②想いや根っこをもとにして行動が起こされる。

      ③その行動が誰かにとってのきっかけになる。

      ④誰かにとって新しいきっかけから想いや根っこがうまれる、以下ループ、、、

      壁打ちにおける私の事例でいくと

      ①相手に壁打ちに参加していただく(きっかけ)

      ②相手の想いや根っこを知りたい!と想うようになる(想い・根っこ)

      ③想いを知るために相手に関連した書籍を読む(行動)

      ④この行動が相手にとってのきっかけになってほしいと思う(新しいきっかけ)

      といった具合でしょうか。

      壁打ちに参加された方にとって人生を考えるきっかけになるだけでなく、私や他の壁役との出会いがまた違ったきっかけになることが理想です。しかし本当にそうなっているかは実際のところ打ち手側にしかわかりません。それでも、そうなるように努力することこそが私たちの成長になっていることだけは確実です。

      こういった意味で、学生側(打ち手側)に100%主体があるものの、社員側(壁側)にとっても成長させていただける良い機会となっているメリットがあると言えます。

      きっかけを大事にすることが、結果として誰かを想った行動となり、その行動は相手の新しいきっかけにもなり得る、そういったことを壁打ちを通して学ばせていただいています。

       

      いかがでしたでしょうか。ここまでお読みいただきありがとうございました。

      弊社採用活動については西井個人ブログにて想いが語られていますのでよろしければご覧ください。

      またお時間ありましたら、迅技術経営のホームページ弊社リクルート用ページも併せてご覧ください。