不安から資格を探す人に、キャリアコンサルタントが伝えたいこと

「何か資格を取ったほうがいいでしょうか?」
キャリアの相談をお受けてしていると、こうした話題になることがよくあります。

子育てが少し落ち着いたとき、ふとこれからのキャリアや将来のことを考えると、急に不安になることがありますよね。
「今の働き方のままで大丈夫かな……」
「ブランクがあるから、何か資格を持っていたほうが安心かも」
そんな気持ちから資格取得を考えるのは、ごく自然なことです。

もちろん、資格を取るために勉強して知識を身につけたり、新しい仕事に挑戦するきっかけにしたりすることは、とても素晴らしいことです。

ただ、私は「将来が不安だから、とりあえず何か資格を取ろう」という考え方は、あまりおすすめしていません。なぜなら、資格はあくまでも「目的を達成するための手段」のひとつだからです。

「資格があれば安心」のワナ

資格を取ったからといって、100%仕事に困らなくなる保証があるわけではありません。収入が上がる保証があるわけでもありません。

むしろ、自分の未来への不安を埋めるために資格を取ると、
「この資格だけでは足りないかもしれない」
「もう一つ資格を取ったほうが安心かも……」
と、不安を埋めるために次々と資格を探す「資格迷子」になってしまうことも。

だからこそ、資格を探す前に一度、考えてみてほしいことがあります。
それは、「自分はこれから、どんな働き方をしたいのか(何を成し遂げたいのか)」ということです。

資格を取っただけでは、仕事にはならない

例えば、弊社に所属している「中小企業診断士」や「国家資格キャリアコンサルタント」どちらも専門的な知識や技能を身につけることのできる魅力的な国家資格です。

一方で、これらは「持っていれば自動的に仕事がもらえる」という性質の資格ではありません。

中小企業診断士の資格を取っても、それだけで経営者から相談が来るわけではありません。

  • どんな社会課題を解決したいのか
  • どんな企業(または個人事業主)を支援したいのか
  • 自分のこれまでの経験と、知識をどう組み合わせるのか
    資格を取得した「その先」を考える必要があります。

これは、キャリアコンサルタントも同じです。一口にキャリアコンサルタントと言っても、実は活動する場所(領域)はさまざまです。

  • 企業領域:従業員のキャリア形成や人材育成に関わる
  • 需給調整領域:ハローワークや職業紹介などで就職を支援する
  • 教育領域:学校などで学生の就職やキャリアを支援する
  • 地域・福祉領域:地域の支援機関などで一人ひとりの状況に応じた支援を行う

どの領域で活動するかによって、必要とされる知識や経験は大きく変わってきます。

つまり、資格を取ること自体がゴールではありません。
「誰をどこで支援したいのか」「どんな価値を届けたいのか」。そこまで考えて初めて、資格取得後に何を学び、どんな経験を積んでいく必要があるのかが見えてきます。

「目的が先、資格は後」

自分が「成し遂げたいこと」が先にあり、そのための手段として資格を選ぶのであれば、資格取得には大きな意味があります。

目指すべき正しい順番は、こうです。

  1. 成し遂げたいこと(目指すべき社会・やりたいこと)がある
  2. そのために必要な知識や経験を考える
  3. 必要なら資格を取る
    「不安だから資格を探す」という逆の順番になっていませんか?

安定は、資格ではなく「自分の中」につくる

資格そのものが、あなたの未来をずっと保証してくれるわけではありません。

知識を身につけること。経験を積むこと。人とのつながりをつくること。自分で考え、意思決定すること。そして、学んだことを少しずつでも実際の仕事や生活で使っていくこと。

こうした「自分自身の経験の積み重ね」こそが、結果としてこれからのキャリアの頑丈な土台(安定)をつくっていきます。

もし、「資格を取るなら、何がおすすめですか?」と聞かれたら、私は資格の名前を答える前に、こう聞くと思います。
「資格を取って、あなたはどんなことをしてみたいですか?」

必要なのは、資格かもしれないし、現場での実務経験かもしれません。今の環境で新しい仕事に挑戦することや、新しいコミュニティに飛び込んでみることかもしれません。

「私は、この資格を使って何を成し遂げたいのだろう?」

時間もお金も限られているからこそ、資格の勉強を始める前に、ぜひ一度自分に問いかけてみてくださいね。その答えがあって初めて、資格はあなたの未来を切り拓くための、心強い味方になってくれるはずです。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

いまこそ見直したい「共助」の力

~「任意だから参加しない」で、本当にいいのだろうか~

「自助・共助・公助」という言葉があります。

自助は、自分でできることは自分ですること。
共助は、地域や身近な人同士で助け合うこと。
公助は、行政など公的な仕組みによって支えることです。

この中で、今あらためて考えてみたいのが「共助」です。

近年、PTAや町会・自治会などについて、
「加入は任意なのだから入らない」
「参加するかどうかは個人の自由」
という考え方を耳にすることが増えました。

もちろん、その通りだと思います。

任意の団体である以上、加入しないという選択も尊重されるべきですし、家庭や仕事の事情によって活動への参加が難しい人もいます。

無理に参加を求めたり、「入るのが当たり前」と圧力をかけたりすることには、私も違和感があります。

ただ一方で、私はこうも思います。
「任意だから参加しない」で終わってしまって、本当に地域は成り立つのだろうか。

自分が参加しなくても、誰かがやっている

例えばPTAでは、子どもたちの登下校の見守りや学校行事への協力など、さまざまな活動が行われています。

町会や自治会でも、防災、防犯、地域清掃、ゴミ集積所の管理、地域行事、高齢者や子どもの見守りなど、日常生活を支える活動があります。

普段はあまり意識しないかもしれません。

けれど、私たちが地域で安心して暮らすことができる背景には、見えないところで動いている人たちがいます。

「私は参加していないから関係ない」
と思っていても、その活動によって生まれた安心や環境の恩恵を受けていることは少なくありません。

つまり、誰かが担ってくれているのです。

「時代に合わない」と思うなら、変える側に回るという選択もある

もちろん、PTAや町会・自治会の運営方法の中には、
「これは今の時代に合っていないのではないか」
「もっと効率よくできるのではないか」
「なぜ毎年同じやり方を続けているのだろう」
と感じるものもあると思います。

でも、だからといって、
「古いやり方だから関わらない」
で終わってしまうのは、少しもったいないように思います。

時代に合わないと思うのであれば、自分が運営する側に入り、変えていくという選択肢もあるのではないでしょうか。

会議の回数を減らす。
オンラインを活用する。
必要性の低い行事を見直す。
「例年こうしているから」という理由だけで続いていることをやめてみる。
だれかに負担が偏らない仕組みを考える。

実際に運営する側に入ってみると、それまで見えていなかった事情が分かることもあります。

逆に、「これはもう必要ないのでは」
と外から見ていた人だからこそ、気づける改善点もあります。

地域活動は、昔からある形をそのまま守ることが目的ではありません。
地域に必要なものを、その時代に合った形で続けていくこと。
そのためには、新しい人が運営に加わり、新しい視点を持ち込むことも必要だと思います。

批判することと、当事者になること

何かに対して、
「おかしい」
「非効率だ」
「もっとこうすればいいのに」
と言うことは簡単です。

もちろん、疑問を持つことや意見を言うことは大切です。
でも、地域の活動は誰かが運営しています。
もし変えたほうがよいと思うのであれば、自分もその輪の中に入り、意見を出し、一緒に変えていく。
それもまた「共助」ではないでしょうか。

共助とは、困った人を助けることだけではなく、自分たちが暮らす地域を自分たちでよりよくしていくことでもある。
私はそう考えています。

「全員が同じように」ではなく、「できることを」

もちろん、全員が役員を務めるべきだと言いたいわけではありません。

仕事が忙しい人もいます。
子育てや介護をしている人もいます。
体調や家庭の事情で、活動に参加することが難しい時期もあります。
大切なのは、全員が同じだけ負担することではないと思います。

できる人が、できるときに、できることをする。

会議に出ることが難しいなら、別の形で手伝う。
運営はできなくても、地域の行事に参加する。
子どもの登下校の時間に家の前から少し見守る。
近所の人に挨拶をする。

それも立派な地域との関わりです。

共助を「誰かがやってくれるもの」にしない

少し気になるのは、「地域活動はやりたい人がやればいい」という考え方です。

一見もっともらしく聞こえます。

でも、みんながそう考えたらどうなるでしょう。

見守りをする人がいなくなったら。
地域の防災訓練を準備する人がいなくなったら。
ゴミ集積所を管理する人がいなくなったら。
地域の行事を運営する人がいなくなったら。

それまで当たり前に存在していたものが、少しずつなくなっていきます。

共助は、サービスではありません。
誰かがお金をもらって提供してくれているものでもありません。
地域に暮らす人たちが少しずつ力を出し合うことで成り立っているものです。

だからこそ、
「誰かがやってくれるもの」ではなく、「自分も地域をつくる一人である」
という意識は、常に持っていたいと思います。

「入る・入らない」だけの話ではない

PTAや町会に入るか入らないか。
役員をするかしないか。

それだけが共助ではありません。
組織に所属しなくても、地域の中でできることはあります。

だから私は、「PTAや町会には必ず入るべきだ」と言いたいわけではありません。

ただ、「任意だから私は関係ない」で思考を止めないこと。
そして、「この地域で暮らす一人として、自分には何ができるだろう」と一度考えてみること。それが大切なのではないかと思っています。

「お互いさま」で暮らせる地域へ

便利な社会になり、人に頼らなくてもできることは増えました。
その一方で、人と人とのつながりは少しずつ薄くなっているようにも感じます。

自助だけでは支えきれないことがあります。
公助だけでも支えきれないことがあります。

その間にあるのが共助です。

自分でできることは自分でする。
難しいときには周囲で助け合う。
それでも難しいことは社会の仕組みで支える。

そして、自分たちの地域に改善したほうがよいことがあるなら、誰かが変えてくれるのを待つのではなく、自分たちでよりよい形を考えていく。

それもまた、共助だと思います。

「任意だから参加しない」という自由を認めながらも、
では、自分は地域のために何ができるのか。
変えたいことがあるなら、自分はどう関われるのか。

そこまで考えることが、「共助」を見直すということではないでしょうか。

誰にも迷惑をかけない社会ではなく、
「困ったときはお互いさま」と言える地域へ。
地域は、誰かがつくってくれるものではありません。
そこに暮らす私たち一人ひとりが、少しずつつくっていくものなのだと思います。

上島美和

意見出しは「経験の浅い人」から

会議や研修の中で、参加者から自由にアイデアを出してもらう「ブレインストーミング」。
さまざまな考えを出し合い、新しいアイデアを生み出すための方法ですが、実際にやってみると、

「なかなか発言が出ない」
「いつも同じ人ばかりが話している」
「結局、上司の意見にまとまってしまう」

そんなことはないでしょうか。

ブレインストーミングを行うとき、私が大切だと考えていることの一つが、
経験の浅い人から順番に話すことです。

上司の一言は、思っている以上に影響力がある

例えば、5人で新しい企画について話し合っているとします。
最初に経験豊富な上司が、「私はA案がいいと思う」と話したとします。

その後で若手社員に、「自由に話してください」
と言っても、本当に自由に話せるでしょうか。

もちろん、「私はB案のほうがいいと思います」と言える人もいるでしょう。

しかし、
「上司がA案と言っているのに反対していいのかな」
「経験の浅い自分の考えなんて、的外れかもしれない」
「変なことを言って恥ずかしい思いをしたくない」
そう考えてしまう人も少なくありません。

上司にそのつもりがなくても、役職や経験年数そのものが、場に大きな影響を与えることがあります。
だからこそ、話す順番を工夫する必要があります。

経験の浅い人だからこそ話せることがある

もうひとつ、仕事の経験が長くなるほど、多くの知識やノウハウが蓄積されていきます。
それはもちろん大きな強みです。

一方で、経験があるからこそ、
「これまでもこうだったから」
「普通はこうするものだから」
「それは難しいだろう」
と、無意識のうちに選択肢を狭めてしまうこともあります。

反対に、経験の浅い人だからこそ、
「どうしてこのやり方なんですか?」
「こうしたほうが簡単ではないですか?」
「こんな方法もあるのでは?」
と、素朴な疑問や新しい視点を口にできることがあります。

そして時には、これまでの慣例に囚われない意見が、組織に新しい気づきをもたらすこともあります。

本人は、「こんなことを話していいのかな」と思っているかもしれません。
でも、その一言が、組織にとって大切な気づきになることがあります。
ブレインストーミングでは、正解を出すことよりも、まずたくさんの視点を言葉にすることが重要です。

だからこそ、経験や役職に関係なく話せる環境をつくる必要があります。

心理的安全性は「何でも話していいよ」だけではつくれない

最近は「心理的安全性」という言葉を耳にする機会も増えました。
心理的安全性というと、「何でも自由に話せる職場」
というイメージを持つ方もいるかもしれません。

しかし、「遠慮せず何でも話してください」
と伝えるだけで、本当に話せるようになるでしょうか。

私は、心理的安全性は言葉だけではなく、場のつくり方によって生まれるものだと思っています。

例えば、
経験の浅い人から順番に話す。
途中で否定しない。
話した内容をすぐに評価しない。
「それは違う」と結論を急がない。
一人ひとりが最後まで話せるようにする。

こうした小さな工夫の積み重ねが、
「ここでは自分の考えを話しても大丈夫なんだ」
という感覚につながっていきます。

話す機会が人を育てる

若手社員が自分の考えを言葉にして話すことには、もう一つ意味があります。
それは、自分で考える習慣をつくることです。
いつも上司が答えを出して、「これをやって」
と指示しているだけでは、社員はなかなか自分で考えるようにはなりません。

一方で、
「自分ならどうするだろう」
「ほかにどんな方法があるだろう」
と考え、それを自分の言葉で話す機会が増えることで、少しずつ自分なりの考えを持てるようになります。

もちろん、最初から素晴らしい答えが出るとは限りません。
でも、それでいいのです。
考えて、話して、他の人の話を聞き、また考える。
その経験そのものが、人を育てていきます。

発言の順番を変えるだけでも、組織は変わる

心理的安全性を高めよう。
意見の出る組織にしよう。
そう考えると、大きな制度や仕組みが必要に思えるかもしれません。

でも、まずできることは意外と小さなことです。
次の会議で、「今日は経験の浅い人から順番に話してみよう」
それだけでもいいのではないでしょうか。

上司が最初に答えを言わない。
経験の浅い社員から、自分の考えを話してもらう。
そして、周りは途中で否定せず、まず最後まで聞く。

その積み重ねが、「自分の考えを話してもいい組織」をつくっていきます。

ブレインストーミングで大切なのは、たくさんのアイデアを出すことだけではありません。
誰もが安心して自分の考えを言葉にできる場をつくること。

そして、そのためには、経験の浅い人から順番に話す。
そんな小さな工夫から始めてみてはいかがでしょうか。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

「現場が忙しくて研修に出せない」は、本当でしょうか?

キャリアを考える機会を、もっと身近に

「キャリアについて考えたことはありますか?」
そう聞かれても、
「特に困っていないし、考えたことがない」
「今の仕事を続けていけばいいと思っている」
「まだ20代、30代だし、将来のことはそのうち考えればいい」
そんな方も多いのではないでしょうか。

私は、むしろそんな方にこそ、一度キャリアについて考える機会を持ってほしいと思っています。

何かに悩んでから考えるのではなく、まだ選択肢がたくさんあるうちに考える。
転職したくなってからでも、今の仕事を続けられなくなってからでもなく、
「今は特に困っていない」時だからこそ、自分のこれからを考えてみる。
それが大切だと思っています。

私がキャリアストームに懸けている想いは、とてもシンプルです。
「キャリアを考える機会を、もっと身近なものにしたい」
ということです。

キャリアは「仕事」だけではない

「キャリア」と聞くと、
昇進すること
資格を取ること
転職すること
年収を上げること
そんなイメージを持つ方もいるかもしれません。

もちろん、それらもキャリアの一部です。
でも、私はキャリアをもっと広く捉えています。

どんな仕事をするのか
どんな働き方をするのか
管理職を目指すのか
専門職として力を磨いていくのか
一般社員として現場の第一線で働き続けるのか

そして、それだけではありません。

結婚するのか、しないのか
子どもを持つのか、持たないのか、何人持つのか
どこで暮らしたいのか
家族との時間をどのくらい持ちたいのか
仕事にどのくらいの時間やエネルギーを使いたいのか
思い描く生活にどのくらいの収入が必要なのか
何を学び、何に挑戦していきたいのか

こうした人生の選択も、すべてキャリアにつながっています。
だからキャリアについて考えるというのは、「次にどんな仕事をするか」だけを考えることではありません。

自分はこれから、どんな人生を送りたいのか。
その暮らしを実現するために、仕事をどう位置づけていくのか。
そこまで考えることだと思っています。

「普通」は、本当に自分が選んだものだろうか

「もっと早く考えておけばよかった」
「気づいた時には、簡単には動けなくなっていた」
そんな声を聞くことがあります。

一つの会社で長く働くのが普通
結婚するのが普通
子どもを持つのが普通
女性は家庭を優先するのが普通
男性は仕事を優先するのが普通
年齢を重ねたら管理職を目指すのが普通

これまでの社会には、たくさんの「普通」がありました。
もちろん、その生き方を自分で選び、幸せだと感じているのであれば、それでいいと思います。

私から見れば窮屈そうに見える選択でも、ご本人にとっては大切に選んできた人生かもしれません。
私自身も、自分の価値観というフィルターを通して人を見ています。
だから、どんな生き方が正しくて、どんな生き方が間違っている、と言いたいわけではありません。

ただ、一つ思うことがあります。
その「普通」は、本当に自分が選んだものなのだろうか。


「みんなそうしているから」
「親にそう言われたから」
「この地域ではそれが当たり前だから」

そうやって周囲の価値観を自分の価値観だと思い込み、気づかないうちに人生の選択肢を狭めてしまうことがあります。

私が怖いのは、選択肢が少なくなることそのものではありません。
自分で選んだつもりがないまま、気づけば選べる道が少なくなっていることです。

5年後、どんな「毎日」を送っていたいですか

キャリアについて考えるとき、
「5年後、どんな仕事をしていたいですか?」
と聞かれることがあります。

もちろん、それも大切な問いです。
でも私は、もう少し広く、
「5年後、どんな毎日を送っていたいですか?」
と考えてみてほしいと思っています。

朝は何時に起きていますか
どこで、誰と暮らしていますか
どんな仕事をしていますか
何時頃に仕事を終えていますか
休日はどんなふうに過ごしていますか
家族との時間はありますか
自分のために使える時間はありますか

そして、もう一つ考えてほしいのが、お金のことです。

自分一人で生活していくなら、どのくらいの収入が必要なのか。
結婚した場合、家庭全体としてどのくらいの収入が必要なのか。
子どもを持つとしたら、教育費や生活費はどう変わるのか。
夫婦のどちらか一方の収入に大きく依存するのか。
二人とも働き続けるのか。
働く時間を減らす時期があるとすれば、その期間を家庭としてどう支えるのか。

キャリアを考える時、つい「自分はいくら稼ぎたいか」と考えがちです。

でも本当は、
「どんな暮らしをしたくて、その暮らしには家庭としてどのくらいの収入が必要なのか」
まで考えることが大切だと思っています。
今は働きやすさを優先していても、5年後、10年後には必要な収入が増えているかもしれません。
反対に、収入を最優先にしてきたけれど、家族との時間や自分の時間をもっと大切にしたいと思う時期が来るかもしれません。

だからこそ、
どんな暮らしをしたいのか。
その暮らしにはどのくらいのお金が必要なのか。
そのためにはどんな働き方が必要なのか。
その働き方を選べるようにするために、今何を身につけておけばいいのか。
そこまでつなげて考えてみてほしいのです。

何も選ばなくても、時間は進んでいく

もちろん、20代や30代ですべてを決める必要はありません。
人生は計画通りに進むことばかりではありません。
結婚も、子どもを持つことも、仕事も、自分一人の意思だけですべて決められるわけではありません。

でも、だからといって考える意味がないわけではありません。

大切なのは、
「自分はどうしたいのか」を、自分自身が知っていること。
何も決めなくても、時間は進んでいきます。

今の会社に居続けることも一つの選択
学ばないことも一つの選択
挑戦しないことも一つの選択
「まだ考えなくてもいい」と先送りすることも、一つの選択です。
その積み重ねの先に、5年後、10年後の自分があります。

手持ちのカードが多いうちに考えてほしい

私は、キャリアの選択肢を「手持ちのカード」に例えることがあります。
若いうちは、比較的たくさんのカードを持っています。

転職する
勉強する
資格を取る
新しい仕事に挑戦する
住む場所を変える
一時的に収入が下がっても、挑戦出来る新しい道へ進んでみる

そして、
収入を上げられる力を身につけること。
働き続けられる力を身につけること。
これも、将来の自分が使える大切なカードだと思っています。

もちろん、置かれている環境は人それぞれですし、何歳からでも新しい挑戦はできます。
ただ、年齢を重ねたり生活環境が変わったりすると、意思決定をするときに考えなければならない条件が増えていくこともあります。

家族
住宅ローン
老親のこと
子どもの教育費
家庭として必要な収入

責任が増えることは、決して悪いことではありません。
でも、それによって「以前なら選べたカード」が選びにくくなることはあります。

だから私は、手持ちのカードが減ってから初めて考えるのではなく、カードがたくさんあるうちに一度考えてほしいと思っています。

すぐに転職する必要もありません。
何か大きな決断をする必要もありません。
今の会社で働き続けるという結論でもいいのです。

ただ、「何となくここにいる」のではなく、
「私は考えたうえで、今ここにいる」
と言えることは、とても大切だと思っています。

キャリアストームで、まだ経験していない未来を考える

そのきっかけとして、私はキャリアストームをお勧めしています。
キャリアストームでは、ゲームの中で時間が進み、さまざまな出来事に直面します。

仕事、収入、学び、家族、時間、
その都度自分で考え、意思決定していきます。

専門職として専門性を高める道を選ぶのか。
管理職として組織をまとめる道を選ぶのか。
一般社員として現場の第一線で活躍し続けるのか。
仕事をセーブし、子どもと向き合うのか。

そして、仕事だけではなく、自分の人生をどう組み立てていくのかも考えていきます。
ゲームだからこそ、まだ経験していない未来を疑似体験できます。

その中で、
「自分は思っていた以上に金銭的安定を大切にしている」
「お金より時間を優先したいのかもしれない」
「家庭を持つことを考えるなら、収入についても考えておきたい」
「若いうちから学んでおいた方がいいかもしれない」
そんな、自分でも気づいていなかった価値観が見えてくることがあります。

キャリアストームは、未来の正解を教えてくれるゲームではありません。
自分の価値観に気づき、自分の未来を考えるゲームです。

だから、個人でも参加しやすくしたい

キャリアについて考える機会は、会社から与えられるものだけではないと思っています。
もちろん会社が用意してくれるのは有難いですが
会社が研修を用意してくれるのを待つだけではなく、
自分の人生について考える機会を、自分で選ぶ。
そんな文化がもっと広がってほしいと思っています。

だから金沢の迅技術経営で開催するキャリアストームは、個人の方にも参加していただきやすいよう、8,800円(税込)という価格にしています。

拘束時間も半日です。
丸一日の研修ではありません。

「転職を考えるほど悩んでいるわけではない」
「今の仕事に大きな不満もない」
「将来のことを深刻に悩んでいるわけでもない」

でも、
「一度くらい、自分のこれからを考えてみようかな」
そんな気持ちで参加していただける場にしたい。

キャリアについて考えることへのハードルを、できるだけ低くしたい。
それが、この価格と時間設定に込めた想いです。

悩んでからではなく、悩む前に

私は、キャリアストームを「人生に迷っている人のためだけの研修」にはしたくありません。

むしろ、
今の仕事に大きな不満はない。
毎日普通に働いている。
将来について特に困っていることもない。
そんな20代、30代の方にこそ体験してほしいと思っています。

問題が起きてから考えるのではなく、何も起きていない時に考える。
選択を迫られてから考えるのではなく、選択肢がたくさんある時に考える。

その経験が、いつか人生の大きな意思決定をするときに、自分を助けてくれると思うからです。

人生の経営者は、自分自身

私は、「人生の経営者は自分自身」という言葉を大切にしています。

会社が、自分の人生を最後まで決めてくれるわけではありません。
家族も、上司も、周囲の人も、代わりに自分の人生を生きてくれるわけではありません。

仕事、結婚、子ども、暮らし、時間、収入、学び

何を大切にして、どんな人生を選んでいくのか。
すべてを思い通りにできるわけではありません。

それでも、自分の人生について考え、できる範囲で自分自身が意思決定していくことはできます。

転職を考えていなくてもいい。
明確な夢がなくてもいい。
今の生活に不満がなくてもいい。

20代、30代のどこかで一度、
「私はこれから、どう生きて、どう働いていきたいのだろう」
と考えてみてほしい。

そして、
「その暮らしを実現するために、私はどんな力を身につけておきたいのだろう」
と、もう一歩先まで考えてみてほしい。

手持ちのカードがまだたくさんある今だからこそ、できる準備があります。

キャリアについて考えることを、何か問題が起きた時だけの特別なものではなく、もっと身近なものへ。

それが私の願いです。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

迅技術経営(金沢本社)開催のキャリアストームお申込み

その価値観、本当にあなたのもの?

子育てをしていると、たくさんの「こうしたほうがいい」に出会います。


「子どもが3歳になるまでは、お母さんがそばにいたほうがいい」
「いや、1歳になったら働いたほうがいい」
「早く保育園に入れたほうが、協調性が身につく」
「学童に預けるなんて、かわいそう」

子どもが成長しても、それは終わりません。

「仕事をしてもいいけれど、女性なんだから家事や育児を優先すべき」
「女性はサポート業務のほうが向いている」
「女性は公の場で発言を慎むべき」
「リーダーは男性のほうが向いている」

こうした言葉を、親や配偶者、友人、職場の人などから聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

でも、一度考えてみてほしいのです。

今あなたがこうしたほうがいいと思っているその価値観、本当にあなた自身のものでしょうか?

「そういうものだ」と思い込んでいないか

人は、周囲から何度も同じことを言われていると、それをいつの間にか「当たり前」だと思うようになります。

「母親ならこうするもの」
「女性ならこうするもの」
「子どものためにはこうするもの」

そして、本当は自分がどうしたいのかを考える前に、「そうしなければならない」と思ってしまうことがあります。

もちろん、子どもが小さいうちは仕事をせず、そばで成長を見守るという選択も素敵です。
早い時期から仕事に復帰するという選択も素敵です。
学童を利用することも、仕事をセーブすることも、管理職を目指すことも、サポート役として力を発揮することも、その人自身が納得して選んだのであれば、どれも一つの生き方です。

大切なのは、「何を選ぶか」以上に「誰が決めたのか」ではないでしょうか。

外野は、あなたの人生に責任を取ってくれない

周りの人はいろいろなことを言います。

「子どもがかわいそう」
「もっと働いたほうがいい」
「そんなに仕事を頑張らなくてもいい」
「せっかく働くなら正社員になったほうがいい」
「女性がそこまで前に出なくても」

けれど、その選択によって生まれる結果を引き受けるのは、周りの人ではなくあなたです。

外野は、あなたの人生に責任を取ってくれないのです。

だからこそ、自分で考え、自分で意思決定することが大切です。
周囲の意見を聞いてはいけない、ということではありません。

いろいろな人の考えを聞き、情報を集めることは必要です。

ただ、最後に決めるのは自分。

「みんながそう言うから」ではなく、

「私はどうしたいのか」
「私は何を大切にしたいのか」
「5年後、10年後、どんな自分でいたいのか」

そこまで考えたうえで、自分なりの答えを出す。
そして、一度決めた選択も、環境が変われば変えていいのだと思います。

自分の人生は、自分で選ぶ

私たちは、自分でも気づかないうちに、親の価値観、世間の常識、職場の文化、SNSで目にする「正解」に影響されています。

だから、ときどき立ち止まって問いかけてみる。
「それ、本当に私が大切にしたいこと?」

子育ても、仕事も、キャリアも誰かが決めた正解に、自分の人生を合わせる必要はありません。

自分で考えて、自分で選んで、その選択を自分の中で正解にしていく。
人生の経営者は、自分自身です。

だからこそ、大切な意思決定を誰かに委ねず、自分の人生のハンドルは、自分で握っていたいですね。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

中小企業の採用、どうする?

〜大企業と同じ土俵に乗らない採用を〜

採用活動をしていると、

「うちは給与が高くないから応募が来ない」
「年間休日も大企業にはかなわない」
「福利厚生も充実しているとは言えない」

そんな声を聞くことがあります。

確かに、給与や福利厚生、休日数、会社の知名度といった条件だけを並べれば、中小企業が大企業と真正面から勝負するのは簡単ではありません。

では、中小企業は何で勝負するのか。

私は、その一つが「人」だと思っています。

採用に関わった人と、一緒に働く

大企業の場合、採用担当者と入社後に一緒に働く人が違うことも珍しくありません。
一方、中小企業ではどうでしょうか。

会社説明をしてくれた人。
面接をしてくれた経営者。
職場見学で案内してくれた社員。

その人たちと、入社後も一緒に働く可能性が高いのが中小企業です。

つまり求職者にとって、採用活動の段階ですでに、
「この人たちと毎日働きたいと思えるか」
を感じることができます。

これは、中小企業だからこそ持てる大きな強みではないでしょうか。

「誰と働くか」は、条件と同じくらい大切

仕事は、一日の多くの時間を使うものです。
だからこそ、給与や休日だけではなく、
「どんな人と働くのか」
「困ったときに相談できる人がいるのか」
「自分の成長を応援してくれる人がいるのか」
「経営者は社員をどのように見ているのか」
こうしたことも、会社を選ぶうえで大切な判断材料になります。

特に中小企業では、人と人との距離が近いからこそ、その会社の雰囲気や価値観が働きやすさに直結します。

だから私は、採用活動では会社の良いところを説明するだけではなく、そこで働いている人そのものを見てもらうことが大切だと考えています。

採用担当者だけに任せない

そう考えると、採用を「採用担当者の仕事」にしてしまうのは、もったいない。

経営者が自分の言葉で会社の未来を語る。
若手社員が入社後の経験を話す。
子育て中の社員が実際の働き方を伝える。
先輩社員が仕事の面白さだけでなく、大変さも話す。

いろいろな社員が採用に関わることで、求職者は「この会社で働く自分」をイメージしやすくなります。

そして何より、
「面接のときに話してくれたあの人と、一緒に働ける」
という安心感にもつながります。

会社の規模や知名度ではなく、
「この社長のもとで働いてみたい」
「この先輩と一緒に仕事をしてみたい」
「この人たちの中なら、自分も成長できそう」
そう思ってもらえれば、それは中小企業にとって大きな採用力になります。

全員に選ばれる必要はない

中小企業は大企業のように多くの応募者を集める必要はありません。

自社の考え方に共感し、一緒に働きたいと思ってくれる人と出会えればいい。

だからこそ、
「私たちはこんな会社です」
「こんな人たちが働いています」
「こんなことを大切にしています」
ということを、飾りすぎずに発信していくことが大切です。

ブログやInstagram、動画、会社見学などを通して、働いている人の顔や言葉を見せていく。

それを見て、
「ここは自分には合わない」
と思う人がいることも、決して悪いことではありません。
お互いに納得して選ぶことが、入社後のミスマッチを減らすことにもつながります。

中小企業は「人」で勝負できる

給与を上げることも、休日を増やすことも、福利厚生を整えることも大切です。
しかし、大企業と同じ条件をそろえなければ採用できないわけではありません。

中小企業には、
採用のときに出会った人と、そのまま一緒に働ける。
という強みがあります。

どんな人が働いているのか。
どんな考え方を持っているのか。
どんな雰囲気の中で仕事をしているのか。

それを採用活動の中でしっかり見せていく。

条件で勝負するのではなく、「この人たちと働きたい」と思ってもらう。
それも、中小企業だからこそできる採用の形ではないでしょうか。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

就職先を決める前に、考えてほしいこと

~迅技術経営が採用活動で「壁打ち」を大切にする理由~

これから社会に出る皆さんは、就職先を選ぶとき、何を大切にしていますか?
給与、休日、福利厚生、勤務地、企業の知名度、安定性。
どれも大切な条件です。

もちろん、自分が興味を持っている業界や職種から就職先を探している方も多いと思います。

では、少し違った質問をしてみます。
「あなたは、これからの人生で何を成し遂げたいですか?」
急にそう聞かれると、答えに困る方も多いのではないでしょうか。

実は、迅技術経営では採用活動の中で、この問いについて考えていただく機会を設けています。

それが「壁打ち」です。

迅技術経営の「壁打ち」とは?

迅技術経営では採用過程の前に、希望される方を対象とした「壁打ち」を実施しています。

壁打ちとは、自分の考えや思いを相手に話し、対話を通じて自分自身の考えを整理したり、深めたりすることです。
当社では、社員が壁となり、求職者の方と1回1~2時間程度、全3回を目安に対話を行っています。

壁打ちの目的は、当社への入社を勧めることでも、面接で良い評価を得るための答えを一緒に考えることでもありません。

「これからの人生の中で成し遂げたいこと」を考えるきっかけにしていただくこと。
これが一番の目的です。

何を大切にして生きていきたいのか。
どんなことに喜びや、やりがいを感じるのか。
誰のために、どんなことをしたいのか。

これまでの経験を振り返りながら、自分自身と向き合っていただきます。

すぐに答えを見つける必要はありません。
大切なのは、誰かに用意された答えではなく、自分自身で考えることです。

就職活動のゴールは、内定をもらうこと?

就職活動が始まると、エントリーシートを書いたり、面接の練習をしたりと、忙しい日々が続くと思います。
周囲の友人が内定をもらい始めると、焦ることもあるでしょう。
そんな中で、いつの間にか「内定をもらうこと」が目的になってしまうことはないでしょうか。

しかし、就職はゴールではありません。
むしろ、社会人としての人生のスタートです。

希望する会社に就職できたとしても、そこで何をしたいのかがわからなければ、そこにいる意味が分からなくなる。

反対に、自分が大切にしたい価値観や、成し遂げたいことがある程度見えていれば、企業の知名度や待遇だけではない視点で就職先を選べるのではないでしょうか。

大企業に入ることだけが成功ではありません。
中小企業にも、若いうちからさまざまな仕事に挑戦できたり、経営者やお客様との距離が近かったりする魅力があります。
また、就職以外にも、起業や家業を継ぐといった選択肢があるかもしれません。

大切なのはどの道が一般的に評価されるかではなく、自分が何を大切にしてその道を選ぶのかということです。

採用活動に、なぜ時間をかけるのか

企業の採用活動というと、書類選考や面接を通じて、自社に合う人材を見極めることが一般的だと思います。

企業側にとって、採用活動にかけられる時間には限りがあります。
その中で、迅技術経営では壁打ちという形で、一人ひとりとの対話に時間をかけています。しかも、壁打ちをした方が必ず当社に入社するとは限りません。

それでも、なぜ時間をかけるのでしょうか。

私は、採用活動は企業が人を選ぶだけの場ではなく、求職者が企業を選ぶ場でもあると思っています。
企業にとっては多くの採用活動の一つかもしれませんが、学生の皆さんにとって、初めての就職先を選ぶことは人生の大きな意思決定です。

だからこそ、企業のことを十分に知ってほしい。
そして、それと同じくらい、自分自身についても深く考えてほしい。

どんな仕事をするのかだけでなく、その仕事を通じて何を実現したいのか。
会社が求める人物像に自分を合わせるのではなく、自分が目指す未来と会社が目指す未来に重なる部分があるのか。
そんなことを考えたうえで、納得して就職先を選んでほしいのです。

時間はかかりますが、その過程には大きな意味があると考えています。

採用につながらなくても、無駄にはならない

迅技術経営の壁打ちは、正式な採用選考とは別の段階で行っています。

そのため、壁打ちを通じて自分自身の考えが整理された結果、当社以外の道を選ぶ方もいます。それでも構わないのです。

私たちが大切にしているのは、当社に入社してもらうことだけではありません。

一人でも多くの人が自分の人生について考えるきっかけを持ち、自分の意思で次の一歩を踏み出していくことにも価値があると考えています。

迅技術経営には「共育恩送®」という大切にしている考え方があります。
人は誰かとの出会いや、誰かから受けた支援によって成長することがあります。
そして、自分が受け取ったものを、今度は別の誰かに送っていく。

壁打ちを通じて得た気づきが、数年後、誰かの人生を支えることにつながるかもしれません。そのように考えると、採用につながらなかったからといって、かけた時間が無駄になるわけではないと思うのです。

また、学生の皆さんとの対話は、壁打ちを担当する社員にとっても学びの機会になります。異なる価値観や経験を持つ人の話に耳を傾け、理解しようとすることは、自分自身の視野を広げることにもつながります。
まさに、共に育つ機会なのだと思います。

自分の人生を、他人任せにしないでほしい

私はキャリアコンサルタントとして、皆さんに伝えたいことがあります。
それは、「自分の人生の経営者は、自分自身である」ということです。

これから社会に出ると、さまざまな選択をすることになります。
仕事、転職、結婚、子育て、住む場所、働き方。
人生には何度も意思決定の機会があります。

そのたびに、周囲の意見や世間の常識が気になることもあるでしょう。

もちろん、誰かに相談することは大切です。
しかし、最終的に自分の人生を引き受けるのは、自分自身です。

だからこそ、周囲が良いと言う会社だから、親が安心するから、友人が目指しているから、という理由だけで進路を決めてほしくないのです。

自分が大切にしたいことは何なのか。
自分はどう生きていきたいのか。

今、明確な答えがなくても構いません。

これからの経験や出会いによって、考えが変わることもあるでしょう。
それでも、自分自身に問い続けることには意味があると思います。

これから社会に出る皆さんへ

皆さんは、これから多くの人と出会い、さまざまな経験を重ねていくことでしょう。
その中には、自分の価値観が大きく変わるような出会いもあるかもしれません。

就職活動は、企業から選ばれるためだけの時間ではありません。
自分がどのように生きたいのかを考え、そのための環境を自分で選ぶ時間でもあります。

だからこそ、企業の名前や条件だけでなく、その会社が何を大切にしているのか、そこで働く人たちがどんな思いで仕事をしているのかにも目を向けてほしいと思います。

そして、自分自身について考える時間も、ぜひ大切にしてください。
迅技術経営の壁打ちが、そのきっかけの一つになれば嬉しく思います。

就職先を決めることよりも、もっと長いこれからの人生。
その人生を、自分自身の意思で歩んでいってほしいと願っています。

キャリアコンサルタント上島美和

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ベンチマークで感じた「制度」と「風土」、そして挑戦し続ける力

先日、福井県の企業2社へベンチマークに行ってきました。
訪問したのは、清川メッキ工業株式会社と福井経編興業株式会社です。
どちらも高い技術力を持つ企業ですが、印象に残ったのは技術そのものではありませんでした。

「人をどう育てるのか」
「人が働き続けたいと思える会社をどうつくるのか」
「会社として新しいことにどう挑戦していくのか」

普段、人材育成に関わる仕事をしている私にとって、多くの気づきをいただいた一日となりました。

人材定着は、制度だけでは実現しない

1社目は、清川メッキ工業株式会社です。
こちらの会社は第16回日本でいちばん大切にしたい会社大賞を受賞しています。
今回は人材の定着を中心にお話を伺いました。
特に印象に残ったのは、人材定着についてさまざまな仕組みをつくり、実践し、そして改善を繰り返していることです。

「この制度を導入すれば、人が辞めなくなる」そんな単純な話ではありません。

実際に制度をつくってみる。
運用してみる。
うまくいかなければ見直す。

経営者として社員と向き合いながら、試行錯誤を続けていることが伝わってきました。

完成された制度を見せていただいたというよりも、より良い会社にしていくために、今も考え続け、改善し続けている。
姿勢そのものが、とても印象的でした。

従業員一人ひとりが「自分の言葉」で話していた

さらに印象に残ったのが、現場見学です。
工場を案内してくださった従業員の皆さんが、メッキの工程について丁寧に説明してくださいました。
会社の人材育成に関する目標についても、それぞれが自分の言葉で話してくださったのです。
これは、簡単なことではないと思います。

会社に立派な経営理念や人材育成方針が掲げてあったとしても、そこで働く人が自分の言葉で説明できなければ、それは「会社が決めた言葉」のままです。

一方で、一人ひとりが自分の言葉で話せるということは、それだけ日々の仕事の中に考え方が浸透しているということではないでしょうか。

人材育成に携わっていると、どうしても「制度」や「研修」といった仕組みに目が向きがちです。

もちろん、仕組みは大切です。
しかし、仕組みだけをつくっても、人は育たない。
制度があり、それを支える風土があり、さらに現場で働く一人ひとりがその意味を理解している。制度を強化しすぎたと感じたら風土へ戻す。

今回の見学を通じて、あらためて「制度と風土の両方が必要なのだ」と感じました。

「衣料から医療へ」――福井経編興業の挑戦

2社目は、福井経編興業株式会社です。
こちらの会社は第10回「ものづくり日本大賞」で最高賞の内閣総理大臣賞を受賞しており、『下町ロケット』でモデルとなった企業です。

今回お話の中で印象に残ったのが、「臆することなくチャンスをつかむこと」
という言葉です。

福井経編興業さんは、衣料分野で培ってきた「編む」という技術を、医療分野へと展開してきました。

「衣料から医療へ」。
言葉にすると短いですが、これまでとは異なる分野へ進出することは、決して簡単なことではないはずです。
それでも、自社が培ってきた技術の可能性を信じ、目の前に現れたチャンスを逃さずに挑戦していく。

その姿勢が、現在の事業につながっているのだと感じました。
そして、もう一つ心に残ったのが、
「社長は、社員とその家族の人生を背負っている」というお話です。

経営者が新しいことに挑戦するというと、思い切った決断や大胆さに目が向きがちです。
しかし、その決断の向こう側には、社員がいます。
そして、その社員を支える家族がいます。

だからこそ、ただ勢いだけで挑戦するのではない。
会社を存続させ、働く人たちの生活を守りながら、その先の未来をつくっていく。
チャンスをつかむ大胆さと、社員とその家族の人生を預かる責任。

その両方を持つことが、経営者なのだと感じました。

「地域全体の幸せ」

今回、2社のお話を伺っていて、強く印象に残った共通点があります。
それは、どちらの経営者も、会社の中だけを見ていなかったことです。

目指しているのは、地域全体が幸せになること。
ただし、そのためにはまず、社員と、その家族が幸せであること。

会社が利益を上げることも大切です。
事業を成長させることも大切です。

けれども、その会社で働く人が幸せでなければ、その先にある地域の幸せにはつながっていかない。

社員が安心して働き、その家族も安心して暮らせる。
その会社が地域に根づき、雇用を生み、取引先や地域社会にも良い影響を与えていく。
そう考えると、会社経営は会社の中だけで完結するものではないのだと思います。

「社員を大切にする」という言葉はよく聞きます。

しかし今回の2社は、それを福利厚生や制度だけで捉えているのではなく、
社員とその家族、そして地域まで含めて幸せを考えている。
その姿勢が、とても印象に残りました。

ベンチマークは「真似をするため」に行くのではない

今回2社を訪問して、改めて感じたことがあります。

ベンチマークは、成功している会社の制度や取り組みをそのまま真似するために行くものではない、ということです。

社員が定着しているから、この制度を導入しよう。
新しい事業に成功しているから、同じことをやってみよう。
それだけでは、おそらくうまくいきません。

大切なのは、その取り組みの背景にある考え方や姿勢を見ること。

清川メッキ工業さんからは、人を大切にしながら、制度と風土の両面から組織をつくり、改善を続けていく姿勢を学びました。

福井経編興業さんからは、自社の技術の可能性を限定せず、チャンスに臆することなく挑戦すること。そして、その挑戦の裏側には、社員とその家族の人生を背負うという経営者としての責任があることを学びました。

さらに、2社に共通していたのは、
まず社員とその家族が幸せになること。
その先に、地域全体の幸せがある。

という考え方です。

良い会社には「完成形」があるわけではないのかもしれません。

人も、組織も、事業も変わっていく。
だからこそ、考え、実践し、振り返り、また改善する。
今回のベンチマークは、私自身も普段関わっている人材育成について、
「制度をつくることが目的になっていないか」
「研修をすることが目的になっていないか」
「その先に、どんな会社、どんな地域をつくりたいのか」
を改めて考える機会になりました。

「いい会社だった」で終わらせず、自分たちの仕事にどう生かしていくか。
私にとってこれからの支援の姿勢を考えさせられる一日でした。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

清川メッキ工業株式会社
福井県にあるめっき加工企業。電子部品、半導体ウエハ、医療機器、自動車部品などの各種材料に対する電解・無電解めっき加工をおこなっている。ナノめっき技術が強み。第16回日本でいちばん大切にしたい会社大賞 内閣総理大臣表彰受賞。

福井経編興業株式会社
福井県にある経編(たてあみ)生地の製造企業。近年、医療材料の開発(人工血管、心臓修復パッチ等)し注目を集める。池井戸潤氏の小説『下町ロケット2 ガウディ計画』に登場する医療用パッチのモデル企業のひとつ。第10回モノづくり日本大賞 内閣総理大臣賞受賞。

「努力した経験」は、大人になってからも自分を支えてくれる

最近、「非認知能力」という言葉を耳にする機会が増えました。

読み書きや計算、テストの点数など、数字で測りやすい力を「認知能力」と呼ぶのに対して、非認知能力とは、

・目標に向かって努力する
・コツコツ続ける
・自分をコントロールする
・人との約束を守る
・途中で投げ出さずに取り組む

といった点数では簡単に測ることのできない力を指します。
こうした力は大人になってから突然身につくものではありません。
私は子どもの頃からの小さな積み重ねが大切なのではないかと思っています。

「勉強を頑張ること」は、学力だけのためではない

「いい学校に入ることだけが人生の成功ではない」これは、その通りだと思います。
どこの学校を卒業したかだけで、その後の人生が決まるわけではありません。
ただ、だからといって、
「学歴なんて関係ない」
「勉強なんてできなくてもいい」
と考えるのも、少し違うのではないでしょうか。

例えば、
「この高校に入りたい」
「この大学を目指したい」
という目標を持ち、そのために毎日コツコツ勉強する。

遊びたい日もある。
なかなか成績が上がらない時もある。
模試の結果を見て落ち込むこともある。

それでも、自分で決めた目標に向かって努力を続ける。

たとえ最終的に第一志望の学校に届かなかったとしても、その過程で身につけたものまで無駄になるわけではありません。

むしろ、「目標を決めて、そこに向かって努力した経験」そのものが、その人の力になるのだと思います。

例えば、そろばん

私が分かりやすい例だと思うのが、そろばんです。
もちろん、そろばんを習えば計算が速くなるというメリットがあります。

でも、そろばんを習う価値は、それだけでしょうか。

毎週決まった日に教室へ行く。
家でも練習する。
級が上がるために練習を続ける。
思うようにできなくても、繰り返し練習し、また挑戦する。

こうした経験の中で、
「毎日少しずつ続ける」
「できるようになるまで粘り強く練習する」
「目標に向かって頑張る」
という習慣が身についていきます。

大人になれば、そろばんを使う機会はほぼありません。

でも、そろばんを通して身につけた「コツコツ努力する力」は残ります。
私は、ここに大きな意味があると思っています。

ビジネスの世界でも「当たり前のことを続けられる人」は強い

仕事をしていると、特別な才能だけで評価されるわけではないことに気づきます。

例えば、
約束した期限を守る。
時間を守る。
頼まれたことを最後までやる。
分からないことをそのままにしない。
必要な勉強を続ける。
すぐに結果が出なくても続ける。
どれも、とても地味なことです。

でも、こうしたことを当たり前に続けられる人は、周囲から少しずつ信用されていきます。

「あの人にお願いすれば、きちんとやってくれる」
「あの人は約束を守る」
「あの人なら最後まで取り組んでくれる」

ビジネスでは、この信用がとても大切です。

能力が高くても約束を守らない人より、約束したことをきちんと実行する人のほうが仕事を任せやすい。

そして信用は、一日でつくられるものではありません。
小さな行動の積み重ねによってつくられていくものです。

子どもの頃の「頑張った経験」は、将来につながっている

子どもに勉強をさせる目的を、「いい学校に入れるため」
だけにしてしまうと、少し苦しくなってしまうかもしれません。

でも、「目標に向かって努力する経験をしてほしい」
と考えると、少し見え方が変わります。

勉強でもいい。
スポーツでもいい。
音楽でもいい。

大切なのは、「最初から上手にできたか」ではなく、
少し難しいことに向き合い、コツコツ続けた経験があるかどうかです。
子どもの頃は、その価値になかなか気づかないものです。

けれど、大人になり仕事をするようになると、
努力を続けられること。
約束を守れること。
嫌になっても簡単に投げ出さないこと。
そうした力が、自分自身を助けてくれる場面がたくさんあります。

テストの点数や学歴は、その人の一部分にすぎません。
でも、何かを目指して一生懸命努力した時間は決して無駄にはならない。
そこで育った力は、目には見えなくても、その人の中に残り続けます。

だから私は、
子どもたちには「結果」だけではなく、「努力できたこと」も大切にしてほしい。

そして私たち大人も、結果だけを見るのではなく、
「毎日続けているね」
「約束を守れたね」
「最後まで頑張ったね」
そんな、数字では測れない成長にも目を向けたいですね。

子どもの頃から積み重ねてきた小さな習慣。

それがいつか、社会に出たときの「信用」や「仕事をやり抜く力」につながっていくのではないでしょうか。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和