「現場が忙しくて社員を研修に出す余裕がない。」
経営者の方とお話をしていると、この言葉を耳にする機会が少なくありません。
確かに、人手不足の中で一人が現場を離れることへの不安は大きいものです。
特にリーダー候補となれば、「あの人がいないと現場が回らない」と感じるのも無理はありません。
しかし、私はいつも思います。
最初から余裕のある会社など存在しません。
「余裕ができたら研修に出そう。」
そう考えているうちは、その余裕はなかなか生まれないのです。
忙しさの原因は、「育成できていないこと」かもしれない
現場が忙しい理由はさまざまです。
仕事量が多い、人手が足りない、受注が増えている…。
もちろん、それらも大きな要因です。
しかし、その忙しさをさらに大きくしている原因の一つが、 「任せられる人が育っていないこと」 ではないでしょうか。
いつも同じ人が判断し、同じ人が指示を出し、同じ人しか対応できない。
その人が休めば現場が止まり、研修にも出せない。
そうした状態が続けば、忙しさはいつまで経っても変わりません。
だからこそ、私はリーダー候補を思い切って研修へ送り出す決断が必要だと考えています。
意外と現場は回るもの
「本当に大丈夫だろうか。」 送り出す前は誰もがそう思います。
ですが実際には、多くの現場は何とか回るものです。
残ったメンバー同士で相談しながら進めたり、これまで指示を待っていた社員が自分で考えて行動したり。
リーダーがいないからこそ、一人ひとりが少しずつ責任を持ち始めます。
もちろん完璧ではありません。 多少の遠回りや失敗もあるでしょう。
しかし、その経験こそが現場を強くしていきます。
リーダー不在は、現場の成長のチャンス
リーダーが研修へ行くことで成長するのは研修を受ける本人だけではありません。
現場に残るメンバーにも、大きな学びがあります。
「自分で判断しなければならない。」
「いつもリーダーがやってくれていた仕事は、こんなに大変だったのか。」
そんな気づきが生まれます。
責任を持って考え、仲間と協力して乗り越えた経験は、その人自身の自信につながります。 リーダーが一時的に不在になることは、現場にとっても成長の機会なのです。
リーダー自身も、「安心して抜けられる準備」をする
一方で、研修に参加するリーダー候補にも大切な役割があります。
それは、安心して現場を任せられる準備をすることです。
担当業務を整理する。 引き継ぎを行う。 判断に迷いそうなポイントを共有する。
「困ったら相談してね」ではなく、「こんな場合はこう判断してほしい」と具体的に伝える。
こうした準備も、リーダーとして欠かせない仕事です。
「自分がいないと現場が回らない。」
それは一見頼もしく聞こえますが、本当に目指したい姿ではありません。
本来リーダーが目指すべきなのは、 「自分がいなくても現場が回る状態をつくること」 です。 人に任せることも、育てることも、リーダーの大切な仕事なのです。
研修は、未来への投資
研修は、知識を増やすためだけのものではありません。
リーダー候補は視野を広げ、現場では残ったメンバーが考えて動く力を養う。
双方が成長することで、組織全体の力が高まっていきます。
「忙しいから育てられない。」 そう考えている限り、忙しさは変わりません。
しかし、 「忙しいからこそ育てよう。」
そう決断した会社は、少しずつ任せられる人が増え、現場に余裕が生まれていきます。
育成は、時間ができてから始めるものではありません。
時間を生み出すために始めるものです。
未来の現場を支えるリーダーを育てるためには、経営者が送り出す勇気を持つこと。
そして、リーダー自身が安心して任せられる準備をすること。
その積み重ねが、「誰か一人に頼る組織」ではなく、「みんなで支え合える組織」をつくっていくのだと私は思います。