当たり前を疑え

先日、企業の現場を訪問した際に改めて感じたことがあります。

それは、「改善のタネは、特別なところではなく、日常の中にある」ということです。

現場では毎日同じ作業を繰り返します。

だからこそ、
いつの間にか「これが当たり前」と思い込み、そのやり方に疑問を持たなくなります。

しかし、改善の第一歩は、「本当にこのやり方がベストなのだろうか?」と問いかけることです。

例えば、
・よく使う道具なのに取りに行くまでに数歩歩いている
・作業ごとに何度も同じ場所へ移動している
・ゴミ箱が遠く、捨てるために何度も往復している
・人やモノの流れが交差している
こうしたことは、一つひとつを見ると小さなことかもしれません。
しかし、その小さなムダが毎日積み重なると、大きな時間ロスになります。

特に意識したいのが「導線」です。

作業者がどのように動いているのか。
どこから道具を取り、どこで作業し、どこへ移動しているのか。

実際に現場に立って観察してみると、
「なぜここに置いているのだろう?」
「このゴミ箱、もう少し近くにあった方が便利では?」
「この道具は使用頻度が高いのだから手元に置いた方が良いのでは?」
という気づきが出てきます。

改善というと大掛かりな設備投資や仕組みづくりをイメージする方もいますが、必ずしもそうではありません。

道具の置き場所を変える。
ゴミ箱を増やす(減らす)、回収導線を意識して配置する。
棚の配置を変える。

それだけでも作業効率が大きく向上することがあります。

そして私は、こうした改善活動は人材育成にもつながると考えています。
言われたことをそのままやるのではなく、
「もっと良くする方法はないだろうか?」
と考える習慣が身につくからです。

改善提案が活発な職場には、自ら考え行動する人が育ちます。

まずは身近なところから、今の職場を見渡してみてください。
道具の置き場所は最適でしょうか。
ゴミ箱の数や配置は適切でしょうか。
人の動きにムダはないでしょうか。

当たり前を疑うこと、そこに現場改善の第一歩がありますよ。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

決断の早さが成長を変える

私たちは日々、さまざまな場面で決断をしています。

「もう少し考えてからにしよう。」

研修に参加するか。
新しい仕事に挑戦するか。
資格取得にチャレンジするか。
部下に仕事を任せるか。
転職や就職に向けて応募するか。

どれも人生や仕事に影響を与える決断です。

もちろん、大きな決断ほど慎重になるのは当然です。しかし、私が多くの方と関わる中で感じるのは、成長する人ほど決断が早いということです。

ここでいう「早い」とは、何も考えず勢いで決めることではありません。
必要な情報を集めたら、「まずやってみよう」と決断し、一歩踏み出すことができる人です。

反対に、なかなか成長の機会をつかめない人は、「もっと準備ができてから」「失敗しない方法が分かってから」と考え続けてしまいます。

でも、本当に人を成長させるのは、考えた時間ではなく、行動した回数です。

実際にやってみるからこそ、
「思ったより難しかった。」
「意外とできた。」
「次はこうしてみよう。」
という気づきが生まれます。

つまり、成長とは
決断 → 行動 → 振り返り → 改善
このサイクルをどれだけ多く回せるかで決まります。

決断が早い人ほど、このサイクルを何度も経験します。
だから、経験値が積み重なり、成長するスピードも速くなるのです。

私自身も、専業主婦を経て再就職を考えたとき、「人の成長に関わる仕事がしたい」という思いを大切に、一歩踏み出しました。

キャリアコンサルタントの資格取得も「自信がついてから始めよう」と待っていたわけではありません。
挑戦することを決断し、その都度学びながら進んできた結果が、今の私につながっています。

採用のお手伝いをしている中でも、同じことを感じます。
求人を見て興味を持ったにもかかわらず、
「自分にはまだ早いかもしれない。」
「経験が足りないから応募できない。」
「もっと条件の良い会社があるかもしれない。」
そんなふうに迷っているうちに、募集が終了してしまうことがあります。

実は、多くの企業は「完璧な人材」を探しているわけではありません。

「この人と一緒に成長していきたい。」
そう思える人との出会いを求めています。

だからこそ、少しでも興味を持ったのであれば、まずは会社を知ること、話を聞いてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

応募することは、入社を決めることではありません。
まずは一歩踏み出し、自分の可能性を広げるための行動です。

迅技術経営でも、正式なエントリーをする前に社員と話をする機会を設けています。
「この会社で働くイメージが持てるか。」
「自分が目指していることが出来る環境なのか。」
そんなことを確認した上で応募を決めていただければと思っています。

応募するか迷っている時間よりも、まず話を聞いてみる。
その小さな決断が、自分の未来を大きく変えるきっかけになるかもしれません。

決断とは、正解を選ぶことではありません。
選んだ道を、自分の行動で正解にしていくことです。
完璧なタイミングを待っていても、その日はなかなか訪れません。

だからこそ、小さな決断を積み重ねてみてください。

その一歩が次の挑戦につながり、成長のスピードを加速させてくれるはずです。
人生の経営者は、自分自身。
今日の決断が、10年後、20年後のあなたをつくります。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

いまこそ見直したい「共助」の力

~「任意だから参加しない」で、本当にいいのだろうか~

「自助・共助・公助」という言葉があります。

自助は、自分でできることは自分ですること。
共助は、地域や身近な人同士で助け合うこと。
公助は、行政など公的な仕組みによって支えることです。

この中で、今あらためて考えてみたいのが「共助」です。

近年、PTAや町会・自治会などについて、
「加入は任意なのだから入らない」
「参加するかどうかは個人の自由」
という考え方を耳にすることが増えました。

もちろん、その通りだと思います。

任意の団体である以上、加入しないという選択も尊重されるべきですし、家庭や仕事の事情によって活動への参加が難しい人もいます。

無理に参加を求めたり、「入るのが当たり前」と圧力をかけたりすることには、私も違和感があります。

ただ一方で、私はこうも思います。
「任意だから参加しない」で終わってしまって、本当に地域は成り立つのだろうか。

自分が参加しなくても、誰かがやっている

例えばPTAでは、子どもたちの登下校の見守りや学校行事への協力など、さまざまな活動が行われています。

町会や自治会でも、防災、防犯、地域清掃、ゴミ集積所の管理、地域行事、高齢者や子どもの見守りなど、日常生活を支える活動があります。

普段はあまり意識しないかもしれません。

けれど、私たちが地域で安心して暮らすことができる背景には、見えないところで動いている人たちがいます。

「私は参加していないから関係ない」
と思っていても、その活動によって生まれた安心や環境の恩恵を受けていることは少なくありません。

つまり、誰かが担ってくれているのです。

「時代に合わない」と思うなら、変える側に回るという選択もある

もちろん、PTAや町会・自治会の運営方法の中には、
「これは今の時代に合っていないのではないか」
「もっと効率よくできるのではないか」
「なぜ毎年同じやり方を続けているのだろう」
と感じるものもあると思います。

でも、だからといって、
「古いやり方だから関わらない」
で終わってしまうのは、少しもったいないように思います。

時代に合わないと思うのであれば、自分が運営する側に入り、変えていくという選択肢もあるのではないでしょうか。

会議の回数を減らす。
オンラインを活用する。
必要性の低い行事を見直す。
「例年こうしているから」という理由だけで続いていることをやめてみる。
だれかに負担が偏らない仕組みを考える。

実際に運営する側に入ってみると、それまで見えていなかった事情が分かることもあります。

逆に、「これはもう必要ないのでは」
と外から見ていた人だからこそ、気づける改善点もあります。

地域活動は、昔からある形をそのまま守ることが目的ではありません。
地域に必要なものを、その時代に合った形で続けていくこと。
そのためには、新しい人が運営に加わり、新しい視点を持ち込むことも必要だと思います。

批判することと、当事者になること

何かに対して、
「おかしい」
「非効率だ」
「もっとこうすればいいのに」
と言うことは簡単です。

もちろん、疑問を持つことや意見を言うことは大切です。
でも、地域の活動は誰かが運営しています。
もし変えたほうがよいと思うのであれば、自分もその輪の中に入り、意見を出し、一緒に変えていく。
それもまた「共助」ではないでしょうか。

共助とは、困った人を助けることだけではなく、自分たちが暮らす地域を自分たちでよりよくしていくことでもある。
私はそう考えています。

「全員が同じように」ではなく、「できることを」

もちろん、全員が役員を務めるべきだと言いたいわけではありません。

仕事が忙しい人もいます。
子育てや介護をしている人もいます。
体調や家庭の事情で、活動に参加することが難しい時期もあります。
大切なのは、全員が同じだけ負担することではないと思います。

できる人が、できるときに、できることをする。

会議に出ることが難しいなら、別の形で手伝う。
運営はできなくても、地域の行事に参加する。
子どもの登下校の時間に家の前から少し見守る。
近所の人に挨拶をする。

それも立派な地域との関わりです。

共助を「誰かがやってくれるもの」にしない

少し気になるのは、「地域活動はやりたい人がやればいい」という考え方です。

一見もっともらしく聞こえます。

でも、みんながそう考えたらどうなるでしょう。

見守りをする人がいなくなったら。
地域の防災訓練を準備する人がいなくなったら。
ゴミ集積所を管理する人がいなくなったら。
地域の行事を運営する人がいなくなったら。

それまで当たり前に存在していたものが、少しずつなくなっていきます。

共助は、サービスではありません。
誰かがお金をもらって提供してくれているものでもありません。
地域に暮らす人たちが少しずつ力を出し合うことで成り立っているものです。

だからこそ、
「誰かがやってくれるもの」ではなく、「自分も地域をつくる一人である」
という意識は、常に持っていたいと思います。

「入る・入らない」だけの話ではない

PTAや町会に入るか入らないか。
役員をするかしないか。

それだけが共助ではありません。
組織に所属しなくても、地域の中でできることはあります。

だから私は、「PTAや町会には必ず入るべきだ」と言いたいわけではありません。

ただ、「任意だから私は関係ない」で思考を止めないこと。
そして、「この地域で暮らす一人として、自分には何ができるだろう」と一度考えてみること。それが大切なのではないかと思っています。

「お互いさま」で暮らせる地域へ

便利な社会になり、人に頼らなくてもできることは増えました。
その一方で、人と人とのつながりは少しずつ薄くなっているようにも感じます。

自助だけでは支えきれないことがあります。
公助だけでも支えきれないことがあります。

その間にあるのが共助です。

自分でできることは自分でする。
難しいときには周囲で助け合う。
それでも難しいことは社会の仕組みで支える。

そして、自分たちの地域に改善したほうがよいことがあるなら、誰かが変えてくれるのを待つのではなく、自分たちでよりよい形を考えていく。

それもまた、共助だと思います。

「任意だから参加しない」という自由を認めながらも、
では、自分は地域のために何ができるのか。
変えたいことがあるなら、自分はどう関われるのか。

そこまで考えることが、「共助」を見直すということではないでしょうか。

誰にも迷惑をかけない社会ではなく、
「困ったときはお互いさま」と言える地域へ。
地域は、誰かがつくってくれるものではありません。
そこに暮らす私たち一人ひとりが、少しずつつくっていくものなのだと思います。

上島美和

ベンチマークで感じた「制度」と「風土」、そして挑戦し続ける力

先日、福井県の企業2社へベンチマークに行ってきました。
訪問したのは、清川メッキ工業株式会社と福井経編興業株式会社です。
どちらも高い技術力を持つ企業ですが、印象に残ったのは技術そのものではありませんでした。

「人をどう育てるのか」
「人が働き続けたいと思える会社をどうつくるのか」
「会社として新しいことにどう挑戦していくのか」

普段、人材育成に関わる仕事をしている私にとって、多くの気づきをいただいた一日となりました。

人材定着は、制度だけでは実現しない

1社目は、清川メッキ工業株式会社です。
こちらの会社は第16回日本でいちばん大切にしたい会社大賞を受賞しています。
今回は人材の定着を中心にお話を伺いました。
特に印象に残ったのは、人材定着についてさまざまな仕組みをつくり、実践し、そして改善を繰り返していることです。

「この制度を導入すれば、人が辞めなくなる」そんな単純な話ではありません。

実際に制度をつくってみる。
運用してみる。
うまくいかなければ見直す。

経営者として社員と向き合いながら、試行錯誤を続けていることが伝わってきました。

完成された制度を見せていただいたというよりも、より良い会社にしていくために、今も考え続け、改善し続けている。
姿勢そのものが、とても印象的でした。

従業員一人ひとりが「自分の言葉」で話していた

さらに印象に残ったのが、現場見学です。
工場を案内してくださった従業員の皆さんが、メッキの工程について丁寧に説明してくださいました。
会社の人材育成に関する目標についても、それぞれが自分の言葉で話してくださったのです。
これは、簡単なことではないと思います。

会社に立派な経営理念や人材育成方針が掲げてあったとしても、そこで働く人が自分の言葉で説明できなければ、それは「会社が決めた言葉」のままです。

一方で、一人ひとりが自分の言葉で話せるということは、それだけ日々の仕事の中に考え方が浸透しているということではないでしょうか。

人材育成に携わっていると、どうしても「制度」や「研修」といった仕組みに目が向きがちです。

もちろん、仕組みは大切です。
しかし、仕組みだけをつくっても、人は育たない。
制度があり、それを支える風土があり、さらに現場で働く一人ひとりがその意味を理解している。制度を強化しすぎたと感じたら風土へ戻す。

今回の見学を通じて、あらためて「制度と風土の両方が必要なのだ」と感じました。

「衣料から医療へ」――福井経編興業の挑戦

2社目は、福井経編興業株式会社です。
こちらの会社は第10回「ものづくり日本大賞」で最高賞の内閣総理大臣賞を受賞しており、『下町ロケット』でモデルとなった企業です。

今回お話の中で印象に残ったのが、「臆することなくチャンスをつかむこと」
という言葉です。

福井経編興業さんは、衣料分野で培ってきた「編む」という技術を、医療分野へと展開してきました。

「衣料から医療へ」。
言葉にすると短いですが、これまでとは異なる分野へ進出することは、決して簡単なことではないはずです。
それでも、自社が培ってきた技術の可能性を信じ、目の前に現れたチャンスを逃さずに挑戦していく。

その姿勢が、現在の事業につながっているのだと感じました。
そして、もう一つ心に残ったのが、
「社長は、社員とその家族の人生を背負っている」というお話です。

経営者が新しいことに挑戦するというと、思い切った決断や大胆さに目が向きがちです。
しかし、その決断の向こう側には、社員がいます。
そして、その社員を支える家族がいます。

だからこそ、ただ勢いだけで挑戦するのではない。
会社を存続させ、働く人たちの生活を守りながら、その先の未来をつくっていく。
チャンスをつかむ大胆さと、社員とその家族の人生を預かる責任。

その両方を持つことが、経営者なのだと感じました。

「地域全体の幸せ」

今回、2社のお話を伺っていて、強く印象に残った共通点があります。
それは、どちらの経営者も、会社の中だけを見ていなかったことです。

目指しているのは、地域全体が幸せになること。
ただし、そのためにはまず、社員と、その家族が幸せであること。

会社が利益を上げることも大切です。
事業を成長させることも大切です。

けれども、その会社で働く人が幸せでなければ、その先にある地域の幸せにはつながっていかない。

社員が安心して働き、その家族も安心して暮らせる。
その会社が地域に根づき、雇用を生み、取引先や地域社会にも良い影響を与えていく。
そう考えると、会社経営は会社の中だけで完結するものではないのだと思います。

「社員を大切にする」という言葉はよく聞きます。

しかし今回の2社は、それを福利厚生や制度だけで捉えているのではなく、
社員とその家族、そして地域まで含めて幸せを考えている。
その姿勢が、とても印象に残りました。

ベンチマークは「真似をするため」に行くのではない

今回2社を訪問して、改めて感じたことがあります。

ベンチマークは、成功している会社の制度や取り組みをそのまま真似するために行くものではない、ということです。

社員が定着しているから、この制度を導入しよう。
新しい事業に成功しているから、同じことをやってみよう。
それだけでは、おそらくうまくいきません。

大切なのは、その取り組みの背景にある考え方や姿勢を見ること。

清川メッキ工業さんからは、人を大切にしながら、制度と風土の両面から組織をつくり、改善を続けていく姿勢を学びました。

福井経編興業さんからは、自社の技術の可能性を限定せず、チャンスに臆することなく挑戦すること。そして、その挑戦の裏側には、社員とその家族の人生を背負うという経営者としての責任があることを学びました。

さらに、2社に共通していたのは、
まず社員とその家族が幸せになること。
その先に、地域全体の幸せがある。

という考え方です。

良い会社には「完成形」があるわけではないのかもしれません。

人も、組織も、事業も変わっていく。
だからこそ、考え、実践し、振り返り、また改善する。
今回のベンチマークは、私自身も普段関わっている人材育成について、
「制度をつくることが目的になっていないか」
「研修をすることが目的になっていないか」
「その先に、どんな会社、どんな地域をつくりたいのか」
を改めて考える機会になりました。

「いい会社だった」で終わらせず、自分たちの仕事にどう生かしていくか。
私にとってこれからの支援の姿勢を考えさせられる一日でした。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

清川メッキ工業株式会社
福井県にあるめっき加工企業。電子部品、半導体ウエハ、医療機器、自動車部品などの各種材料に対する電解・無電解めっき加工をおこなっている。ナノめっき技術が強み。第16回日本でいちばん大切にしたい会社大賞 内閣総理大臣表彰受賞。

福井経編興業株式会社
福井県にある経編(たてあみ)生地の製造企業。近年、医療材料の開発(人工血管、心臓修復パッチ等)し注目を集める。池井戸潤氏の小説『下町ロケット2 ガウディ計画』に登場する医療用パッチのモデル企業のひとつ。第10回モノづくり日本大賞 内閣総理大臣賞受賞。