意見出しは「経験の浅い人」から

会議や研修の中で、参加者から自由にアイデアを出してもらう「ブレインストーミング」。
さまざまな考えを出し合い、新しいアイデアを生み出すための方法ですが、実際にやってみると、

「なかなか発言が出ない」
「いつも同じ人ばかりが話している」
「結局、上司の意見にまとまってしまう」

そんなことはないでしょうか。

ブレインストーミングを行うとき、私が大切だと考えていることの一つが、
経験の浅い人から順番に話すことです。

上司の一言は、思っている以上に影響力がある

例えば、5人で新しい企画について話し合っているとします。
最初に経験豊富な上司が、「私はA案がいいと思う」と話したとします。

その後で若手社員に、「自由に話してください」
と言っても、本当に自由に話せるでしょうか。

もちろん、「私はB案のほうがいいと思います」と言える人もいるでしょう。

しかし、
「上司がA案と言っているのに反対していいのかな」
「経験の浅い自分の考えなんて、的外れかもしれない」
「変なことを言って恥ずかしい思いをしたくない」
そう考えてしまう人も少なくありません。

上司にそのつもりがなくても、役職や経験年数そのものが、場に大きな影響を与えることがあります。
だからこそ、話す順番を工夫する必要があります。

経験の浅い人だからこそ話せることがある

もうひとつ、仕事の経験が長くなるほど、多くの知識やノウハウが蓄積されていきます。
それはもちろん大きな強みです。

一方で、経験があるからこそ、
「これまでもこうだったから」
「普通はこうするものだから」
「それは難しいだろう」
と、無意識のうちに選択肢を狭めてしまうこともあります。

反対に、経験の浅い人だからこそ、
「どうしてこのやり方なんですか?」
「こうしたほうが簡単ではないですか?」
「こんな方法もあるのでは?」
と、素朴な疑問や新しい視点を口にできることがあります。

そして時には、これまでの慣例に囚われない意見が、組織に新しい気づきをもたらすこともあります。

本人は、「こんなことを話していいのかな」と思っているかもしれません。
でも、その一言が、組織にとって大切な気づきになることがあります。
ブレインストーミングでは、正解を出すことよりも、まずたくさんの視点を言葉にすることが重要です。

だからこそ、経験や役職に関係なく話せる環境をつくる必要があります。

心理的安全性は「何でも話していいよ」だけではつくれない

最近は「心理的安全性」という言葉を耳にする機会も増えました。
心理的安全性というと、「何でも自由に話せる職場」
というイメージを持つ方もいるかもしれません。

しかし、「遠慮せず何でも話してください」
と伝えるだけで、本当に話せるようになるでしょうか。

私は、心理的安全性は言葉だけではなく、場のつくり方によって生まれるものだと思っています。

例えば、
経験の浅い人から順番に話す。
途中で否定しない。
話した内容をすぐに評価しない。
「それは違う」と結論を急がない。
一人ひとりが最後まで話せるようにする。

こうした小さな工夫の積み重ねが、
「ここでは自分の考えを話しても大丈夫なんだ」
という感覚につながっていきます。

話す機会が人を育てる

若手社員が自分の考えを言葉にして話すことには、もう一つ意味があります。
それは、自分で考える習慣をつくることです。
いつも上司が答えを出して、「これをやって」
と指示しているだけでは、社員はなかなか自分で考えるようにはなりません。

一方で、
「自分ならどうするだろう」
「ほかにどんな方法があるだろう」
と考え、それを自分の言葉で話す機会が増えることで、少しずつ自分なりの考えを持てるようになります。

もちろん、最初から素晴らしい答えが出るとは限りません。
でも、それでいいのです。
考えて、話して、他の人の話を聞き、また考える。
その経験そのものが、人を育てていきます。

発言の順番を変えるだけでも、組織は変わる

心理的安全性を高めよう。
意見の出る組織にしよう。
そう考えると、大きな制度や仕組みが必要に思えるかもしれません。

でも、まずできることは意外と小さなことです。
次の会議で、「今日は経験の浅い人から順番に話してみよう」
それだけでもいいのではないでしょうか。

上司が最初に答えを言わない。
経験の浅い社員から、自分の考えを話してもらう。
そして、周りは途中で否定せず、まず最後まで聞く。

その積み重ねが、「自分の考えを話してもいい組織」をつくっていきます。

ブレインストーミングで大切なのは、たくさんのアイデアを出すことだけではありません。
誰もが安心して自分の考えを言葉にできる場をつくること。

そして、そのためには、経験の浅い人から順番に話す。
そんな小さな工夫から始めてみてはいかがでしょうか。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

「現場が忙しくて研修に出せない」は、本当でしょうか?

不安から資格を探す人に、キャリアコンサルタントが伝えたいこと

「何か資格を取ったほうがいいでしょうか?」
キャリアの相談をお受けてしていると、こうした話題になることがよくあります。

子育てが少し落ち着いたとき、ふとこれからのキャリアや将来のことを考えると、急に不安になることがありますよね。
「今の働き方のままで大丈夫かな……」
「ブランクがあるから、何か資格を持っていたほうが安心かも」
そんな気持ちから資格取得を考えるのは、ごく自然なことです。

もちろん、資格を取るために勉強して知識を身につけたり、新しい仕事に挑戦するきっかけにしたりすることは、とても素晴らしいことです。

ただ、私は「将来が不安だから、とりあえず何か資格を取ろう」という考え方は、あまりおすすめしていません。なぜなら、資格はあくまでも「目的を達成するための手段」のひとつだからです。

「資格があれば安心」のワナ

資格を取ったからといって、100%仕事に困らなくなる保証があるわけではありません。収入が上がる保証があるわけでもありません。

むしろ、自分の未来への不安を埋めるために資格を取ると、
「この資格だけでは足りないかもしれない」
「もう一つ資格を取ったほうが安心かも……」
と、不安を埋めるために次々と資格を探す「資格迷子」になってしまうことも。

だからこそ、資格を探す前に一度、考えてみてほしいことがあります。
それは、「自分はこれから、どんな働き方をしたいのか(何を成し遂げたいのか)」ということです。

資格を取っただけでは、仕事にはならない

例えば、弊社に所属している「中小企業診断士」や「国家資格キャリアコンサルタント」どちらも専門的な知識や技能を身につけることのできる魅力的な国家資格です。

一方で、これらは「持っていれば自動的に仕事がもらえる」という性質の資格ではありません。

中小企業診断士の資格を取っても、それだけで経営者から相談が来るわけではありません。

  • どんな社会課題を解決したいのか
  • どんな企業(または個人事業主)を支援したいのか
  • 自分のこれまでの経験と、知識をどう組み合わせるのか
    資格を取得した「その先」を考える必要があります。

これは、キャリアコンサルタントも同じです。一口にキャリアコンサルタントと言っても、実は活動する場所(領域)はさまざまです。

  • 企業領域:従業員のキャリア形成や人材育成に関わる
  • 需給調整領域:ハローワークや職業紹介などで就職を支援する
  • 教育領域:学校などで学生の就職やキャリアを支援する
  • 地域・福祉領域:地域の支援機関などで一人ひとりの状況に応じた支援を行う

どの領域で活動するかによって、必要とされる知識や経験は大きく変わってきます。

つまり、資格を取ること自体がゴールではありません。
「誰をどこで支援したいのか」「どんな価値を届けたいのか」。そこまで考えて初めて、資格取得後に何を学び、どんな経験を積んでいく必要があるのかが見えてきます。

「目的が先、資格は後」

自分が「成し遂げたいこと」が先にあり、そのための手段として資格を選ぶのであれば、資格取得には大きな意味があります。

目指すべき正しい順番は、こうです。

  1. 成し遂げたいこと(目指すべき社会・やりたいこと)がある
  2. そのために必要な知識や経験を考える
  3. 必要なら資格を取る
    「不安だから資格を探す」という逆の順番になっていませんか?

安定は、資格ではなく「自分の中」につくる

資格そのものが、あなたの未来をずっと保証してくれるわけではありません。

知識を身につけること。経験を積むこと。人とのつながりをつくること。自分で考え、意思決定すること。そして、学んだことを少しずつでも実際の仕事や生活で使っていくこと。

こうした「自分自身の経験の積み重ね」こそが、結果としてこれからのキャリアの頑丈な土台(安定)をつくっていきます。

もし、「資格を取るなら、何がおすすめですか?」と聞かれたら、私は資格の名前を答える前に、こう聞くと思います。
「資格を取って、あなたはどんなことをしてみたいですか?」

必要なのは、資格かもしれないし、現場での実務経験かもしれません。今の環境で新しい仕事に挑戦することや、新しいコミュニティに飛び込んでみることかもしれません。

「私は、この資格を使って何を成し遂げたいのだろう?」

時間もお金も限られているからこそ、資格の勉強を始める前に、ぜひ一度自分に問いかけてみてくださいね。その答えがあって初めて、資格はあなたの未来を切り拓くための、心強い味方になってくれるはずです。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

研修のゴールは「参加すること」ではなく「行動が変わること」

今は、知りたいことがあればインターネットで調べることができます。

検索すればたくさんの情報が出てきますし、AIを使えば、分からないことについてすぐに説明を受けることもできます。以前に比べれば、「知識や情報を得ること」そのものは格段に簡単になりました。

では、そんな時代に、わざわざ仕事の時間を使って社員が研修に参加する意味は何なのでしょうか。

私は、研修の価値は単に「知らなかったことを教えてもらうこと」だけではないと思っています。

研修の本当のゴールは、学んだことによって、その人の行動が変わること。
つまり、行動変容にあるのではないでしょうか。

「知っている」と「できる」は違う

例えば、
「部下の話をよく聞きましょう」
「数字を見て意思決定しましょう」
「自分で考えて行動しましょう」
こうしたことは、インターネットで調べたり、本を読んだりすれば学ぶことができます。

多くの人は、言われなくても「それは大切だ」と分かっているかもしれません。
それでも、実際の職場ではなかなかできない。なぜでしょうか。

それは、知っていることと、実際に行動できることは別だからです。

頭では理解していても、実際にやってみるとうまくいかない。

自分ではできていると思っていたけれど、他の人と一緒に取り組んで初めて、自分の考え方や行動の癖に気づく。

こうした経験は、知識を得るだけではなかなか得られません。

だからこそ、私はこれからの研修では、「何を教えるか」以上に「何を体験できるか」が重要になると考えています。

体験するから、自分ごとになる

迅技術経営では、マネジメントゲーム(MG)やキャリアストームなど、ゲームを活用した体験型研修を行っています。

例えばMGでは、参加者自身が経営者となって意思決定をします。

商品を仕入れる
設備に投資する
人を採用する
販売する

そして、自分の意思決定が会社の数字にどう影響したのかを確認します。

講師から、
「経営では利益が大切です」
「数字を見て判断しましょう」
と説明を受けるだけなら、知識として理解することはできます。

しかし、自分で意思決定をして、
「売上は上がったのに利益が残らなかった」
「もっと早く採用すればよかった」
「この投資は本当に必要だったのだろうか」
と経験すると、その言葉の意味は全く違ってきます。

自分で考え、自分で決め、その結果を自分で受け取る。
この体験があるからこそ、学びが自分ごとになります。

キャリアについても、体験しながら考える

キャリアストームも同じです。

専門職として専門性を高めるのか。
管理職として組織をまとめる道を選ぶのか。
一般社員として現場の第一線で活躍し続けるのか。

ゲームの中でさまざまな意思決定を繰り返しながら、自分自身のキャリアについて考えていきます。

「キャリアについて考えることが大切」
これも、インターネットや本から学ぶことはできます。

しかし、
実際に選択を迫られてみること。
選んだ結果を体験してみること。
そこから、自分が何を大切にしているのかに気づく。

それこそが体験型研修の価値だと思っています。

「楽しかった」で終わらせない

ただし、ゲームを使えば、それだけで良い研修になるわけではありません。

ゲームが盛り上がり、「楽しかったですね」で終わってしまえば、それは単なるイベントになってしまいます。

私たちが大切にしたいのは、その先です。

なぜ、その意思決定をしたのか。
その結果から、何に気づいたのか。
職場に戻ったら、何を変えるのか。

体験したことを振り返り、普段の仕事につなげる。
ここまであって、初めて研修の意味が生まれます。

研修後、何を変えるのか

行動変容というと、とても大きな変化を想像するかもしれません。

しかし、大きく変わる必要はありません。

例えば、
「次の会議では、自分から一度発言する」
「部下に指示を出す前に、まず話を聞いてみる」
「感覚だけではなく、数字を確認してから判断する」
「今まで避けていた仕事に一度挑戦してみる」
そんな小さな一歩でもいいと思います。

研修前と比べて、何か一つ行動が変わる。そして、その小さな変化を積み重ねていく。

それが人の成長につながり、やがて組織の変化につながっていきます。

「研修を受けた」で終わらせない

企業側も、
「今年も研修を実施した」
「管理職を研修に参加させた」
というところで満足してしまってはいないでしょうか。

研修への参加そのものが目的になってしまうと、せっかく時間と費用をかけても、十分な成果にはつながりません。

大切なのは、
研修を受けたあと社員の行動がどう変わったのか。
そこまで見ていくことです。

今は、インターネットやAIを使えば、多くの知識や情報を得られる時代です。
本を読めば、さらに深く、体系的に学ぶこともできます。
だからこそ研修では、知識を一方的に伝えるだけではなく、

体験する
考える
人と話す
振り返る
そして、職場で実践してみる

そこに価値があるのだと思います。

研修のゴールは、「知ったこと」ではなく「行動が変わったこと」。

迅技術経営では、ゲームをゲームで終わらせず、その体験を実際の仕事での行動につなげることを大切にしています。

研修を考えるとき、「何を学ぶか」だけではなく、
「研修後、社員にどんな行動をしてほしいのか」
そこから考えてみることが、人材育成の第一歩なのではないでしょうか。

迅技術経営のセミナーページ

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

「努力した経験」は、大人になってからも自分を支えてくれる

最近、「非認知能力」という言葉を耳にする機会が増えました。

読み書きや計算、テストの点数など、数字で測りやすい力を「認知能力」と呼ぶのに対して、非認知能力とは、

・目標に向かって努力する
・コツコツ続ける
・自分をコントロールする
・人との約束を守る
・途中で投げ出さずに取り組む

といった点数では簡単に測ることのできない力を指します。
こうした力は大人になってから突然身につくものではありません。
私は子どもの頃からの小さな積み重ねが大切なのではないかと思っています。

「勉強を頑張ること」は、学力だけのためではない

「いい学校に入ることだけが人生の成功ではない」これは、その通りだと思います。
どこの学校を卒業したかだけで、その後の人生が決まるわけではありません。
ただ、だからといって、
「学歴なんて関係ない」
「勉強なんてできなくてもいい」
と考えるのも、少し違うのではないでしょうか。

例えば、
「この高校に入りたい」
「この大学を目指したい」
という目標を持ち、そのために毎日コツコツ勉強する。

遊びたい日もある。
なかなか成績が上がらない時もある。
模試の結果を見て落ち込むこともある。

それでも、自分で決めた目標に向かって努力を続ける。

たとえ最終的に第一志望の学校に届かなかったとしても、その過程で身につけたものまで無駄になるわけではありません。

むしろ、「目標を決めて、そこに向かって努力した経験」そのものが、その人の力になるのだと思います。

例えば、そろばん

私が分かりやすい例だと思うのが、そろばんです。
もちろん、そろばんを習えば計算が速くなるというメリットがあります。

でも、そろばんを習う価値は、それだけでしょうか。

毎週決まった日に教室へ行く。
家でも練習する。
級が上がるために練習を続ける。
思うようにできなくても、繰り返し練習し、また挑戦する。

こうした経験の中で、
「毎日少しずつ続ける」
「できるようになるまで粘り強く練習する」
「目標に向かって頑張る」
という習慣が身についていきます。

大人になれば、そろばんを使う機会はほぼありません。

でも、そろばんを通して身につけた「コツコツ努力する力」は残ります。
私は、ここに大きな意味があると思っています。

ビジネスの世界でも「当たり前のことを続けられる人」は強い

仕事をしていると、特別な才能だけで評価されるわけではないことに気づきます。

例えば、
約束した期限を守る。
時間を守る。
頼まれたことを最後までやる。
分からないことをそのままにしない。
必要な勉強を続ける。
すぐに結果が出なくても続ける。
どれも、とても地味なことです。

でも、こうしたことを当たり前に続けられる人は、周囲から少しずつ信用されていきます。

「あの人にお願いすれば、きちんとやってくれる」
「あの人は約束を守る」
「あの人なら最後まで取り組んでくれる」

ビジネスでは、この信用がとても大切です。

能力が高くても約束を守らない人より、約束したことをきちんと実行する人のほうが仕事を任せやすい。

そして信用は、一日でつくられるものではありません。
小さな行動の積み重ねによってつくられていくものです。

子どもの頃の「頑張った経験」は、将来につながっている

子どもに勉強をさせる目的を、「いい学校に入れるため」
だけにしてしまうと、少し苦しくなってしまうかもしれません。

でも、「目標に向かって努力する経験をしてほしい」
と考えると、少し見え方が変わります。

勉強でもいい。
スポーツでもいい。
音楽でもいい。

大切なのは、「最初から上手にできたか」ではなく、
少し難しいことに向き合い、コツコツ続けた経験があるかどうかです。
子どもの頃は、その価値になかなか気づかないものです。

けれど、大人になり仕事をするようになると、
努力を続けられること。
約束を守れること。
嫌になっても簡単に投げ出さないこと。
そうした力が、自分自身を助けてくれる場面がたくさんあります。

テストの点数や学歴は、その人の一部分にすぎません。
でも、何かを目指して一生懸命努力した時間は決して無駄にはならない。
そこで育った力は、目には見えなくても、その人の中に残り続けます。

だから私は、
子どもたちには「結果」だけではなく、「努力できたこと」も大切にしてほしい。

そして私たち大人も、結果だけを見るのではなく、
「毎日続けているね」
「約束を守れたね」
「最後まで頑張ったね」
そんな、数字では測れない成長にも目を向けたいですね。

子どもの頃から積み重ねてきた小さな習慣。

それがいつか、社会に出たときの「信用」や「仕事をやり抜く力」につながっていくのではないでしょうか。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和