「育成キャンセル界隈」の時代に考える、人が成長するための二つの力

最近、「育成キャンセル界隈」という言葉を耳にするようになりました。
部下や後輩を育てることに難しさを感じ、指導そのものを諦めてしまう。そんな現象を表す言葉です。

厳しく指導すれば、パワハラと言われるかもしれない。注意すれば、相手が辞めてしまうかもしれない。それなら、余計なことは言わないほうがいい。
そんな空気が生まれているのかもしれません。

もちろん、理不尽な指導や人格を否定するような叱責が許されるわけではありません。
しかし、人が成長するためには、ときに自分の未熟さと向き合い、耳の痛い言葉を受け止めることも必要です。

では、育成が難しくなったといわれる今の時代、私たちはどうすれば成長し続けられるのでしょうか。

私は、二つのことが大切だと考えています。
一つは、自分を成長させてくれる「師匠」を持つこと。
もう一つは、自分自身を律すること。

この二つは、どちらが欠けても十分ではないと思うのです。

1.厳愛を持って向き合ってくれる「師匠」を持つ

人が成長するとき、そこには誰かとの出会いがあるものです。

自分にはない視点を教えてくれる人。
自分の可能性を信じてくれる人。
そして、ときには厳しい言葉をかけてくれる人。

私は、こうした人の成長を願う厳しさを「厳愛(げんあい)」という言葉で捉えたいと思います。

厳愛とは、ただ厳しくすることではありません。
相手の未来を思うからこそ、言いにくいことも伝える。目先の心地よさより、その人の成長を大切にする。
そこには、相手への愛情と敬意がなければなりません。

人生を振り返ったとき、厳しく指導してくれた上司や先輩の言葉が、後になって心に響くことがあります。

「あのとき、あの人が言ってくれたから」
そう思える人との出会いは、人生の財産ではないでしょうか。

師匠は社内にいても、社外にいてもいい

大切なのは、自分を育ててくれる存在を、会社や上司だけに求めないことです。

社内の先輩でもいい。
別の部署の尊敬できる人でもいい。

社外のメンターや、異業種で活躍する経営者でもいい。
歴史上の偉人でも、研修で出会った講師でもいい。

直接会える人でなくても、その人の生き方や言葉、著書から学び、自分の行動を見つめ直すきっかけを得られるなら、その人もまた、自分にとっての師匠になり得るのではないでしょうか。

年齢や肩書にこだわる必要もありません。
自分の知らない世界を見せてくれる人、自分の考えを深めてくれる人、そして自分の甘さに気づかせてくれる人。
そんな人を、自ら探し、教えを請うことが大切なのだと思います。

ただし、厳しい人がすべて良い師匠というわけではありません。
人格を否定したり、威圧したりすることと、厳愛は違います。
本当の師匠とは、自分を従わせる人ではなく、自分の力で考え、行動できるように導いてくれる人です。

育成をキャンセルする人が増えたと嘆くよりも、まず自分から師匠を探しに行く。
受け身ではなく、自分の成長に責任を持つ姿勢が、今こそ必要なのではないでしょうか。

2.自分を律する力

もう一つ大切なのは、自分自身を律することです。
どれほど素晴らしい師匠に出会っても、その教えを実践するかどうかは自分次第です。

師匠は助言をしてくれますが、代わりに努力してくれるわけではありません。
師匠の存在と同じくらい重要なのが、自分の内側にある規律なのです。

誰かに言われたから努力するのではない。
誰かに叱られるから正しい行動をするのでもない。
自分自身の志に照らして、どうあるべきかを考え、行動する。
これこそが、自分を律するということなのでしょう。

人は誰でも、楽なほうへ流されることがあります。
「これくらいでいいだろう」
「今日はやらなくてもいいだろう」
「自分は悪くない」
そんな気持ちが生まれることもあるでしょう。

そのとき、自分自身に問いかけることができるか。
「本当にそれでいいのか」
「自分の志に恥じない行動だろうか」
「昨日の自分より成長できているだろうか」
他人に厳しく言われなくても、自分で自分を振り返ることができる。

そして、必要な努力を積み重ねていく。

自分の中に、もう一人の厳しい師匠を持つように自分を律すること。
それが、自律した人間になるための大切な姿勢だと思います。

師匠を持つことと、自分を律することは両輪

この二つは、どちらか一方でよいというものではありません。

師匠がいても、自分に学ぶ姿勢がなければ成長は難しいでしょう。
一方、自分を律する力があっても、自分だけの考えに閉じこもっていては、視野が狭くなることがあります。

人は、自分の弱点や思い込みに、なかなか気づけないものです。
だからこそ、外から厳愛を持って向き合ってくれる師匠が必要です。
そして、その教えを受け止め、実践していく自律心も必要なのです。

師匠は、自分では見えないものを見せてくれる存在。
自律心は、そこから自分を変えていく力。
この二つがそろうことで、人はより大きく成長できるのではないでしょうか。
自分を律するということは、決して一人で頑張り続けることではありません。
誰から学ぶのか、誰と付き合うのかを自分の意思で選ぶこともまた、自律の一つなのだと思います。

おわりに――育成を待つのではなく、自ら成長する

「育成キャンセル界隈」という言葉は、現代の職場が抱える難しさを映し出しているように思います。

しかし、育ててもらう機会が減ったとしても、自分自身の成長まで諦める必要はありません。

厳愛を持って向き合ってくれる師匠を見つけること。
そして、自分の中に志と規律を持つこと。

この二つを大切にすれば、どんな環境にいても、成長への道を切り拓くことができるはずです。

成長のために必要なのは、外に「師匠」を持ち、内に「自律心」を持つこと。
誰かが育ててくれるのを待つのではなく、自ら学び、自らを磨いていく。
そんな生き方を大切にしたいですね。

最後に、自分自身に二つの問いを投げかけてみたいと思います。
あなたには、厳愛を持って向き合ってくれる師匠がいますか?
そして、あなたは自分自身を律することができていますか?

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

投稿者:

ueshima

国家資格キャリアコンサルタント (株)迅技術経営