「この研修に行ってきて」で終わっていませんか?

外部研修に送り出す前に、上司が伝えたいこと

社員に成長してほしい。
新しい知識や考え方を身につけて、仕事に生かしてほしい。
そんな思いから、社員を外部研修に送り出している経営者や上司の方は多いと思います。

では、研修に送り出すとき、本人にどのような言葉をかけているでしょうか。

「来月、この研修に行ってきて」
「申し込んでおいたから、予定を空けておいて」
日程と研修内容を伝えて、それで終わってはいないでしょうか。

上司には参加させる理由があっても、本人に伝えていなければ、その思いは伝わりません。研修を仕事での行動につなげるためには、送り出す前の関わりが大切です。

「皆さんは期待されているんですよ」と伝えると

私が研修の冒頭で、参加者の皆さんに伝えていることがあります。

「会社がお金を掛けて、仕事の時間を使って研修に送り出してくれるということは、皆さんに期待しているということですよ」
そうお伝えすると、びっくりされることがあります。

研修への参加には、受講料が掛かります。本人が職場を離れる間、仕事を調整したり、周りの社員が協力したりすることも必要です。会社は、そうした時間や費用を掛けて、社員を送り出しています。

しかし、参加する本人は、その機会を「自分への期待」として受け止めているとは限りません。
「上司に行くように言われたから」
「自分の順番が回ってきたから」
そのような認識で参加している方もいるのかもしれません。

驚かれるたびに、経営者や上司が期待を込めて送り出していても、その思いが本人には十分に伝わっていないのではないかと感じます。

なぜ、あなたに参加してほしいのか

上司は、日頃の仕事ぶりを見ながら、研修への参加者を選んでいると思います。
「そろそろ後輩を指導する立場になってほしい」
「自分の担当業務だけでなく、部署全体にも目を向けてほしい」
「経験を積んできた今だからこそ、一度基本を振り返ってほしい」
こうした期待があるなら、ぜひ本人に伝えてほしいのです。

理由が分からないままだと、本人は「忙しいのに、なぜ自分が行くのだろう」「自分には何か足りないということだろうか」とネガティブに受け止めることもあります。

「研修に行くように言われた」という認識と、「自分の成長を期待して送り出してもらった」という認識では、研修への向き合い方も違ってくるのではないでしょうか。

私からも、研修に参加する機会の意味はお伝えできます。しかし、「なぜ、あなたに参加してほしいのか」を具体的に伝えられるのは、日頃一緒に働いている経営者や上司です。

日頃の仕事ぶりと、これからの期待をつなげる

例えば、若手社員を後輩指導に関する研修へ送り出すとします。
「後輩指導の研修だから、行ってきて」
これだけでは、本人には研修のテーマしか伝わりません。

そこに、日頃の仕事ぶりと期待を添えてみてください。

「最近、後輩から質問を受けることが増えたね。自分の仕事を覚えてきた今、次は後輩ができるようになるための関わり方も身につけてほしいと思っている。今回の研修では、教え方や声のかけ方のヒントを見つけてきてほしい」
このように伝えられると、本人も自分の仕事と研修を結びつけて考えやすくなります。

期待を伝えるために、大げさな言葉は必要ありません。
「あなたの、こういうところを見ている」
「これから、こんな役割を担ってほしい」
「そのために、今回の研修を生かしてほしい」
日頃の働きを見ていることと、これからの成長を期待していること。その両方を、言葉にして届けることが大切です。

期待を伝えたら、本人の考えも聞く

ただし、期待を伝えることが、一方的な要求にならないようにしたいものです。
「お金を掛けているのだから、成果を出してきて」
「研修に行くのだから、全部できるようになってほしい」
こうした伝え方では、本人にとってプレッシャーが大きくなってしまいます。

送り出す前には、上司の期待とともに、本人が今感じている課題も話してみてください。
「今、後輩への教え方で困っていることはある?」
「今回の研修で、どんなことを学びたい?」
「仕事で使えるヒントを、一つ見つけてこられるといいね」
本人の話を聞くことで、上司が気づいていなかった悩みが見えてくることもあります。

会社から言われた研修でも、自分の困りごとや目指す姿とつながれば、参加する意味を見いだしやすくなります。送り出す前の対話は、そのきっかけになります。

「帰ってきたら話そう」まで約束する

研修前には、受講後のことも少し話しておくとよいと思います。

「研修が終わったら、仕事で使えそうだと思ったことを聞かせてね」
「学んだことの中から、すぐに試せそうなこと一緒に考えよう」
ここまで伝えておくと、本人も職場での実践を意識して参加しやすくなります。

そして、帰ってきたら、実際に話を聞く時間を取ってほしいのです。
何に気づいたのか。
自分の仕事と、どこがつながったのか。
明日から、何を試してみたいのか。

例えば、本人が「後輩にすぐ答えを教える前に、どこまで分かっているか聞いてみたい」と話したなら、その実践を後押しする。後日、「試してみてどうだった?」と声をかける。

うまくいかなかったときも、一緒に振り返り、次のやり方を考える。

研修の目的は、参加することだけではありません。学びを仕事での行動につなげることです。そのためには、研修後の上司の関わりも欠かせません。

「行ってきて」に、期待を添える

少人数の会社では、一人が研修に参加するための時間を確保することも、簡単ではないと思います。だからこそ、その機会を本人と会社の成長につなげたいものです。

送り出す前の対話は、長い面談でなくても構いません。
「なぜ、あなたに参加してほしいのか」
「これから、どんなことを期待しているのか」
「本人は、何を学びたいと思っているのか」
まずは、こうしたことを話す時間をつくってみてはいかがでしょうか。

私は研修を担当する立場として、参加者の皆さんに、会社が用意してくれた学びの機会を大切にしてほしいと伝えています。そして、学んだことを職場で試していただきたいと思っています。そこに、上司からの具体的な期待の言葉があれば、本人にとって研修の意味は、より明確になるはずです。

「この研修に行ってきて」に、「あなたに期待していること」を添える。
次に社員を研修へ送り出すときは、ぜひ、その期待を本人に伝えてみてください。

国家資格キャリアコンサルタント上島美和

投稿者:

ueshima

国家資格キャリアコンサルタント (株)迅技術経営