中小企業診断士の西井克己です。
最近有難いことにリーダー・管理職研修で、なぜなぜ分析について講習を依頼いただくことが多くなりました。
理由は、その会社で改善手法としてなぜなぜ分析に取り組んでいるが、なかなか改善が前に進まないからです。
具体的には、その会社で初めてなぜなぜ分析を取り組むのではなく、リーダーや管理職は全員ではないが、かなりの割合で、なぜなぜ分析の外部講習を受講している方が存在する。もしくは、なぜなぜ分析の本を会社で購入し、リーダーや管理職に渡して、一度は読んでいる。でも、なぜなぜ分析による改善がほとんど進んでいない。
今回こそ何とかしたいので、座学はあまりいいので、現場で起こっていることを実際になぜなぜ分析するそんな講習をしてほしい。
というものです。
なぜなぜ分析をする前に、発注カードを作成してみるなど簡単な改善を実際にしてもらってその際に現場をみさせていただいた後、なぜなぜ分析に入ることも少なくありません。
今すぐできる発注カードの作り方はどんなものか興味がある場合は以下の議事をご覧いただけると幸いです。
私のなぜなぜ分析の支援は、ヒューマンエラー系の改善になぜなぜ分析の講義と実践編を2回に分けて講習しています。
この記事では、私が、現場リーダーや管理職や生産現場改善者に対して講義しているポイントをお伝えしたいと思います。
1 ヒューマンエラー系のなぜなぜ分析は、発生した問題をいきなりなぜなぜ分析しない。
なぜなぜ分析は、当然に万能ツールではないので、得意なものと不得意なものがあります。
私が個人的に考えるなぜなぜ分析のいいところは、真因までたどり着きやすいこと、難しいところは、発生した事実に対して複数の原因が複雑に絡み合っているときにはなぜなぜ分析で真因にたどり着きにくいことです。
すなわち、なぜなぜ分析を行う際には、できる限り発生した事象を絞り込むことが大事です。
1-1 表面上に現れたミス(ヒューマンエラー)の背景には、多くのミスが混在している
ヒューマンエラー系のなぜなぜ分析をする際に、ほとんどの会社が、最後に発生した事象だけを捉えてなぜなぜ分析しているということです。
この場合、実際になぜなぜ分析をしてみるとなかなかなぜなぜが進んでいきません。
それはなぜか、最後に発生した事象に行きつくためには、1つのミスではなくいくつものミスが混在しているためです。
個人的には、なぜなぜ分析をしようとしている事象が1つのミスだけで発生していた場合は、比較的簡単になぜなぜが進むのですが、ほとんどそんな事象に出会ったことがありません。
1-2 ヒューマンエラー系のなぜなぜ分析は、分析を行う前に、事象を絞り込む
時系列で、人、行動、あるべき姿を以下のようにまとめます。
具体例を挙げると
表面上のミス 「ある書類が仮入力のまま、リーダーAのチェックもすり抜け、上司までその書類が上がってしまった。」
これを、時系列で、人、行動、あるべき姿でまとめると
日時 | 人 | 行動 | あるべき姿 |
9:00 | リーダーA | 午前中に行う××の入力作業を作業者Bに指示した。 | |
9:10 | 事務職B | 作業手順書に従って××の入力作業を開始した。 | |
10:00 | ①事務職B | 入力していてわからないことがあったが、リーダーAは近くにいなかったので、後で聞けばよいとその箇所を仮に入力し、先へ進んだ | リーダーAに相談すべきであった。また、仮に入力するのではなく、後で気づくようにその箇所をマーキング等すべきであった。 |
10:30 | ②リーダーA | ②急ぎの仕事が入ったため新たな▲▲の仕事を事務職Bに依頼した。 | ②××の仕事の進捗状況を確認すべきであった。 |
10:30 | 事務職B | ××の仕事を中断し、急ぎの仕事を行った。 | |
12:00 | 事務職B | ▲▲の仕事が完了し、リーダーAに報告した。 | |
14:00 | ③事務職B | ××の仕事を終え、リーダーAに報告した。ただし、仮に入力した箇所の報告を忘れた。 | 仮に入力した箇所の報告と、その入力が正しいものか確認すべきであった。 |
17:00 | ④リーダーA | ××の仕事の確認を行った。その日は▲▲の仕事が急に入ったため、チェックが行き届かず、事務職Bが仮に入力した箇所に気づかず、その書類を上司に報告した。 | 多忙を極め、チェックができる状態でない時には重要書類のチェックはすべきではなかった。 |
2 絞り込んだ事象のうちなぜなぜ分析する事象を選択する
時系列でまとめた表では、本来はこのようにすべきであったが、実際はしていない行為が4点あります。
この事例では4つの要因が重なって初めて表面上に出た事例です。
これを「ある書類が仮入力のまま、リーダーAの上司までその書類が上がってしまった」
という事象に対してなぜなぜ分析すると、4つの問題を同時に抱えながらなぜなぜ分析することになりますので、
4つのうち1つを選んでなぜなぜ分析をします。
3 そのヒューマンエラーはやらなかった系か間違った系かを選択する
なぜなぜ分析は事象に対する最初のなぜであるなぜ1がとても大事です。
そのなぜ1を導き出すときに1つの型をつくっています。
すなわち、ヒューマンエラーはやらなかった系か間違った系のどちらかに分類します。
例えば③の××の仕事を終え、リーダーAに報告した。ただし、仮に入力した箇所の報告を忘れたを選択して
なぜなぜ分析をするとします。
そうすると、これはやらなかった系、すなわちされていなかった系なので
事象
事務職BはリーダーAに仮に入力した箇所の報告をしていない
この事象に対して3つの視点でなぜなぜ分析を進めていきます。
すなわち、
1 なぜ、事務職BはリーダーAに報告をしなかったのか?
2 なぜ、事務職BはリーダーAに報告をしなかったことに(自分が)気づかなかったのか?
3 なぜ、リーダーA(周りの人)は、事務職Bが報告をしなかったことに(自分が)気づかなかったのか?
このように大事な最初のなぜをある程度固めたうえで進めていくと、後に発散することも少なくなり、なぜなぜを繰り返すと真因に近づくことが多いです。
事実、2時間の講習の中で真因までたどり着くことも少なくありません。
なぜなぜ分析は難しいと思っていらっしゃる皆様。少し型にはまってしまうかもしれませんが一度、試していただけると幸いです。
なぜなぜ分析の小冊子を作りました。
西井がブログに掲載した事例や実際に使っているフォーマットなどが詰まった
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中小企業診断士西井克己が経営している迅技術経営(中小企業診断士4名、社会保険労務士1名)では、現場改善の相談も受けております。毎週土曜日は相談を受け付けております。遠方の方を対象に最近はスカイプで初期相談もしておりますので、お気軽に問い合わせください。
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