中小企業診断士の西井克己です。
生産性向上と言われ始めてから、従業員研修の仕事が増えてきました。
従業員研修の話をいただいたときは、経営者から現状とあるべき姿をお伺いし、そのうえで研修プログラムを組んでいます。
その時によくお伺いするのは、人が育っている会社の共通点についてです。
当然にその会社その会社で社風も異なり、従業員の能力も性格も異なる。
この中で、人が育つかどうかの共通点を見出すことはとても難しいのです。
あえて共通した項目を挙げるとすると、月に1時間程度の研修などの研鑽の時間を確保し、それを継続し自社の人材育成の成功パターンを持っているということです。
中小企業の人材育成は、現場の中で人を育成するOJTがほとんどです。
現場から離れて、人を育成する時間を確保している中小企業は本当に少ないです。
納期がタイトである、トラブルが発生した。研修より仕事を優先する理由はどれだけでもあります。
それでも、研修の時間を確保し続ける会社は、いい人材が育っていることが多いように感じています。
本日は、弊社が実施してる研修について紹介したいと思います。
1 なぜ中小企業に現場を離れた定期的な研修が必要か?
2 具体的にどんな研修を実施しているのか
1 なぜ中小企業に現場を離れた定期的な研修が必要か?
10人未満の会社は、役職がついていても、実質的には社長がすべての社員を見ることができるため、管理職がいなくても仕事が回ります。優秀な社長がすべてを把握し、トップダウンで経営できているので、管理職や間接部門が必要なく、効率的な経営スタイルの1つであると思います。
しかし従業員が10人を超え20人・30人となるとそういうわけにはいきません。
社長自身ですべてを把握することができなくなり、そのため管理職が必要となります。
この時に問題になるのが、
優秀な社長がトップダウンで経営する際に適した役職者(従業員数は10名まで)と
ある程度の規模感で経営する際に適した役職者(従業員数は10-100名)とは
求められる機能や能力が異なることです。
すなわち前者の役職者は、優秀な社長の指示に従い、それを自分が早く正確に実現することが求められます。則ち、製造業でいうと、会社にあるすべての設備を扱うことができ、設備トラブルが起きてもある程度自分で対応できる人です。この能力は現場でしか身につきませんので、長くその会社に勤めていただいているベテランの職人さんがこれにあたります。
一方で、後者の役職者は、経営トップの考えを自分が役職者として、自分の言葉で、部下にわかりやすいように伝え、部下から聞いた言葉を、経営トップにわかりやすいように自分の言葉で伝える必要があります。
ここまでは、製造業でなくても同じなのですが、製造業の場合は、その役職者があるある程度の技術を持っていないと部下に信頼されないということです(お互いに技術者同士なので、一定の技術を保有していないと判断すると、まともに相手にしてくれません)。
すなわち、10人以上の従業員規模の会社では、ある程度技術もわかって、マネジメントできる人材が必要となるのです。
しかし、製造業の人材育成は、ほとんどが現場で教えていることがほとんど(すなわち、現場でしか身につかないことの人材育成)で、現場を離れた研修をしていないことがほとんどです。たまに、研修をしなくても自らが苦しんで自らが学んで、マネジメント能力を身に着ける方もいらっしゃいます。
そんな方は稀で、ある程度人が育っている会社については、何らかの形で、現場を離れて、一定の時間を取っている。それが、良い方向に向かっている要因ではないかと自分自身は感じています。
すなわち、中小企業は、技術を教える仕組みはできているが、技術以外を教える環境になっていないことが多く、現在の管理職も管理職の仕事をしておらずいわゆる技術者の仕事をしている。このため管理職が育たない。
これを少しずつでも動かすための手段として、現場を離れた研修が有効であると思っています。
2 具体的にどんな研修をしているのか?
弊社の製造業における現場を離れた研修は主に2つを実施しております。
1つは、コミュニケーション研修
もう1つは、マネジメントゲーム研修です。
コミュニケーション研修は、私自身が技術者であったこと、
さらにいうと技術者は、技術レベルの高さが絶対的な評価軸である。
則ちいい仕事をしていたら会社から文句を言われる立場ではない。
という思いを持っておりましたのでその自分の実体験を踏まえて研修をさせていただいています。
すなわち、役職者としては、経営トップとの信頼関係を構築し、そして部下との信頼関係を構築しその橋渡しになることが重要であること。
今の考えのままでは、自分だけは幸せになれるかもしれないが、みんなが幸せなることはできない。
そのためには、自分だけがいい仕事をするのではなく、みんなが少しでもいい仕事ができる環境と整えなければならない。この重要性を伝える研修内容となっています。
その会社の社風や対象者によって実施する内容はカスタマイズしていますが、本質的に伝えることはこの内容となっています。
もう1つは、マネジメントゲーム研修です。
これも私自身の実体験によるものなのですが、技術ばかりやっているとそれ以外の事を学ぶ必要性を感じていません。それ以外を学ぶ必要性を感じていないことが実はネックで、それ以外を学ぶ必要性を感じることが大事である。
マネジメントゲームは、いわゆる行入と言われるビジネスゲームの1つで、とりあえずやってみて感じてもらうことができるものです。
1.理 入 頭から入る知識吸収型の方法
2.行 入 体験することから始める学習の方法
これをすることで、技術はわかっているが、会社の数字やどのようにしたら利益が確保できるのか全く分かっていないことに気づくことができます。則ち、技術以外を学ぶ必要性を感じるきっかけになることがあります。
マネジメントゲームは、体験いただくともっとやってみたいという人と、何かよくわからなかったという人の両極端に評価が分かれます。もっとやってみたいという人に対しては、何回も繰り返しマネジメントゲーム研修を実行することで、技術だけではなく数字もわかる人材に育成することができます(すなわち万能ではありませんが有効な手段の1つです)。
今回は、人が育っている会社の共通点(現場を離れた研修)から、弊社が行っている具体的な研修内容を紹介しました。
中小企業診断士西井克己が経営している迅技術経営(中小企業診断士4名、社会保険労務士1名)では、現場改善の相談も受けております。毎週土曜日は相談を受け付けております。遠方の方を対象に最近はスカイプで初期相談もしておりますので、お気軽に問い合わせください。